
オフショア開発を進める中で、「ルールは共有したはずなのに、なぜか守られない」という課題は珍しくありません。
アクセス制限、アカウント管理、ソフトウェア利用、報告手順…。
どれも守られれば安全ですが、現場で“習慣”として定着しなければ形骸化してしまいます。
この記事では、ルールが現場で守られない背景と、実際に“運用されるルール”を作るための仕組みを整理します。
この記事はこんな人にオススメ!
1.なぜルールは守られなくなるのか
① 「理解したつもり」で終わる
ルールを配布して説明しても、それが“行動レベル”まで落ちていないことがあります。
特にオフショアでは、言語の違いや文化のギャップにより、「なんとなく理解した気になっている」状態が起きやすくなります。
② 現場の実態とルールにズレがある
「現場のツール構成」「普段の作業の流れ」と合わないルールは、実行が難しくなります。
実態と乖離したルールは、「守りたくても守れない」仕組みを生み出します。
③ 違反しても誰も気づかない
監査やチェックがなければ、ルールは自然と形骸化します。
「見つからないから大丈夫」という心理が働くと、徐々に遵守率が下がり、それが“当たり前”になってしまいます。
④ 守ってもメリットを感じない
人は、自分の行動によって何が改善されているか実感できないと、習慣を維持できません。
セキュリティや品質ルールは特に“目に見えにくい”ため、
「守る意義が実感できない」ことが守られない理由になります。
2.“運用されるルール”に必要な3つの要素
オフショア現場でルールを定着させるには、単なる“規程の配布”ではなく、教育・運用・確認の三位一体の設計が必要です。
① ルールは「現場で実行できる形に翻訳する」
ルールをそのまま伝えるだけでは不十分です。
現場チームの作業フローに合わせて、“どう行動すればよいか”まで落とし込む必要があります。
「禁止ソフトを入れない」
→ どの場面で禁止なのか、代替手段は何かを示す
「本番データをコピーしない」
→ テストデータ生成の手順を用意する
「パスワード管理ルールを守る」
→ 具体的なツールや管理方法を推奨する
ルールを行動に翻訳することが、最初の定着ポイントです。
② 教育は“一度教えて終わり”にしない
セキュリティや品質ルールは、忘れた頃に違反が起きます。
そのため、継続的に意識を棚卸しする教育サイクルが必要です。
- 年1〜2回のテスト形式の確認
- 改訂時の再説明
- 新メンバーへのオンボーディング教育
- 月次・四半期ごとのミニ振り返り
「覚えているか?」ではなく、「現場で実践できているか?」を定期的に確認することが重要です。
③ “守られているか”を可視化してフィードバックする
ルールが守られるかどうかは、監査・チェックの仕組みが大きく影響します。
- 権限棚卸し(アカウント管理)
- 端末チェック(インストールソフト確認)
- 作業ログのレビュー
- 週次・月次のプロジェクトチェックリスト
チェックがあることで、「守らなければならない」ではなく、「みんなで守ることが当然になる」文化が生まれます。
また違反が起きた際は、「誰が悪いか」ではなく「なぜ起きたか」「どう防ぐか」をチームで議論することが重要です。
3.ルール定着を支える“文化の設計”
ルールを作っても、文化が伴わなければ長続きしません。
文化づくりの鍵は、「守れるように支援すること」です。
① 守りやすい環境を作る
アクセス権限やツールの設定整備、作業フローの統一など、「守った方が楽になる仕組み」を作ると、遵守率は確実に上がります。
② ミスを“共有しても良い”空気をつくる
ルール違反の多くは、悪意ではなく誤解や不注意から生まれます。
報告した人が責められない文化があることで、改善の速度がチーム全体で加速します。
③ ルールを“組織の価値観”として共有する
単なる規則ではなく、「守ることで顧客の信頼が守られる」、「長期契約につながる」、「チームの評価につながる」といった意味付けをして共有することで、自発的な遵守につながります。
まとめ
オフショア開発でルールが守られない原因は、個人の問題ではなく“仕組みと文化の不足”にあります。
- ルールを行動レベルに翻訳する
- 教育を繰り返し、意識を棚卸しする
- 守られているかを可視化し、改善サイクルを回す
- 守りやすい文化と環境を整える
この4つを揃えることで、ルールは“紙の上の規則”ではなく、現場で運用され続ける仕組みとして定着します。
1月23日|リアル開催|「AI時代のオフショア戦略」セミナー受付中

生成AI、ローカルLLM、AI駆動開発…。
急速に進むAI技術の中で、「オフショア開発の役割はどう変わるのか?」
そんな疑問を持つ企業が増えています。
今回のリアルイベントでは、AI×オフショアを実務で扱う4社が集まり、最新事例と、現場で起きている“リアルな変化”を共有します。
AI活用とオフショアの“これから”を知りたい方に向けた濃い内容となっていますので、情シス・システム部門の責任者の方、開発マネージャーの方、外注選定を担う担当者の方は、ぜひ詳細をご確認ください。
メール配信申込みのご案内
ベトナムオフショア開発協会では、
日越の協業を進めるうえで役立つ考え方や、現場に基づいた知見を日々発信しています。
本記事の内容も含め、より詳しい情報は会員限定コンテンツとしてお届けしています。
セミナーや視察ツアーのご案内とあわせて、メールにてご案内しています。







