こんにちは。ベトナムオフショア開発協会の岸菜です。

グローバル化が進む現代において、一つの会社に勤めながら別の仕事を持つ「副業」は、多くの国で当たり前の働き方になりつつあります。
このコラムでは、海外企業社員の副業の実態を広く見渡し、特に経済成長著しいベトナムの事例を掘り下げ、日本の状況と比較することで、新しい働き方のヒントを探ります。

この記事はこんな人におすすめです。

1.多くの国で広がる副業という選択肢

近年、欧米を中心に「ギグエコノミー」という言葉が浸透しています。これは、インターネットを通じて単発の仕事を請け負う働き方で、フリーランスや副業の拡大を後押ししています。企業側も、特定のプロジェクトに必要な専門スキルを外部から調達できるため、柔軟な人材活用が可能になります。
副業が広く受け入れられる背景には、主に以下の要因が挙げられます。


収入源の多様化
インフレや物価上昇への対応、生活水準の向上、将来への備えとして、本業以外の収入を確保する動きが活発です。

スキルの向上とキャリアの拡張
本業とは異なる分野で副業を行うことで、新たなスキルを習得したり、人脈を広げたりすることが可能です。これは、キャリアアップや転職の際の強みにもなります。

ライフワークバランスの追求
自分の興味や関心のある分野で働くことで、仕事への満足度を高め、より豊かな人生を送るための手段と捉えられています。


特にIT分野では、プログラミングやウェブデザイン、コンテンツ制作など、リモートワークで完結する副業が多く存在します。先進国では、副業を解禁する企業が増え、社員の自律的なキャリア形成を支援する傾向が強まっています。

2.経済成長を背景に活発化するベトナムの副業

東南アジアの経済を牽引するベトナムでは、若者を中心に副業が非常に盛んです。社会主義国でありながら、市場経済を導入し急速な経済発展を遂げる中で、国民の働き方にも大きな変化が起きています。
ベトナムにおける副業の特徴は以下の通りです。


生活防衛と自己実現の両立
まだ物価が比較的安価なベトナムではありますが、特に都市部では生活費が上昇傾向にあります。そのため、家計を支えるために副業をするケースが多く見られます。同時に、自分の好きなことや得意なことを活かして、本業では得られないやりがいや収入を得ようとする若者が増えています。

デジタル技術の活用
スマホの普及率が高く、SNSやeコマースが生活に深く根付いています。このため、オンラインでの副業が非常に活発です。例えば、FacebookやTikTokなどのSNSで商品の販売やアフィリエイトを行うインフルエンサー、eコマースサイトで商品を売る個人事業主、オンラインで語学を教える家庭教師などが多数存在します。

起業家精神の表れ
副業を単なる収入源ではなく、将来の起業に向けた「お試し」期間と捉える若者も少なくありません。本業で得たスキルや経験を活かし、小規模なビジネスを立ち上げることで、市場の反応を確かめ、本格的な事業展開の足がかりとします。


ハノイやホーチミンといった大都市では、本業がITエンジニアやデザイナーの人が、週末にカフェでフリーランスの仕事を受けたり、友人と小さなアパレルブランドを立ち上げたりする光景は珍しくありません。このダイナミックな動きは、ベトナム経済の成長を象徴するものです。

3.ベトナムと日本の副業事情:異なる文化と制度

ベトナムと日本の副業事情を比較すると、興味深い違いが見えてきます。

制度と文化

  • 日本:多くの企業が副業を原則禁止してきた歴史があり、近年は解禁の動きがあるものの、まだまだ浸透しているとは言えません。副業を許容する企業でも、本業に支障が出ないことや競合他社との兼業禁止など、細かなルールを設けている場合がほとんどです。また、終身雇用制度や年功序列といった従来の働き方が根強く残っているため、副業への意識が低い人も少なくありません。
  • ベトナム:企業側も個人側も副業に対して比較的寛容です。法律で副業を厳しく制限する規定もなく、個人の自由な選択として広く受け入れられています。新しいことに挑戦することへのハードルが低く、失敗を恐れずにビジネスを始める起業家精神が、社会全体に根付いていると言えるでしょう。

経済的な動機

  • 日本:副業の動機として、収入アップの他に、スキルアップやキャリアチェンジを目的とする人が増えています。生活のためだけでなく、自己成長や自己実現を重視する傾向が強いです。
  • ベトナム:生活防衛が主な動機となるケースが多い一方で、デジタル技術を活用した自己実現の機会も同時に探求されています。インフラ整備が進み、多様な働き方が可能になったことで、個人が自身の能力を最大限に活かせる環境が整いつつあります。

政府の役割

  • 日本:政府は「働き方改革」の一環として副業を推奨していますが、具体的な制度整備はまだ道半ばです。企業側の意識改革が大きな課題となっています。
  • ベトナム:政府は経済発展のために起業家精神を奨励しており、個人がビジネスを始めることを後押ししています。この国のダイナミズムは、政府の方針と国民の活力がうまくかみ合っている結果と言えるでしょう。

4.日本がベトナムから学べること

日本の社会は、少子高齢化が進み、労働人口が減少していく中で、一人ひとりの生産性を高めることが急務です。多様な働き方を許容し、個人の能力を最大限に引き出すことは、企業の成長だけでなく、日本経済全体の活性化にも繋がります。

ベトナムの事例から日本が学べることは、「挑戦を恐れない姿勢」と「多様な働き方を受け入れる寛容さ」です。副業は、単なる収入源ではなく、個人のスキルを磨き、自己実現を追求するための重要な手段です。企業は、社員の副業を制限するのではなく、むしろ積極的に支援することで、社員のエンゲージメントを高め、新しいアイデアやイノベーションを生み出す土壌を育むことができます。

副業が当たり前になる社会は、個人が自律的にキャリアを築き、企業がより柔軟に人材を活用できる、双方にとってメリットの大きい未来を切り開く可能性を秘めています。日本の社会も、ベトナムのような活気に満ちた働き方を参考にしながら、新たな労働環境を構築していくことが求められているのではないでしょうか。

その他ポイント

  • ベトナムの労働法では、企業が社員の副業を禁止することは出来ない
    • 労働法第19条に「労働者は複数の使用者と労働契約を締結することができる」と明確に 定められているため、たとえ就業規則や雇用契約書に「副業禁止」と記載されていても、その条項は法的に無効となります。
  • ベトナムのフリーランスは現時点(2025年9月)では統計情報がない
    • 今後増加していくであろうと、予想されています。
  • フリーランサーがどうやって仕事を得るのか
    • Upwork & Fiverr、Toptalなどで米ドル、高単価の仕事を得ることが出来ます
    • 実は仲の良い友人同士での仕事のやり取りも多いとされています

岸菜 圭一郎(ベトナムオフショア開発協会 パートナーメンバー)

メール配信申込みのご案内

ベトナムオフショア開発協会では、日越の協業を進めるうえで役立つ考え方や、現場に基づいた知見を日々発信しています。

本記事の内容も含め、より詳しい情報は会員限定コンテンツとしてお届けしています。
セミナーや視察ツアーのご案内とあわせて、メールにてご案内しています。