
こんにちは!VOC事務局です。
国内のIT人材不足が深刻化する中で、オフショア開発は「開発スピードを上げたい」「人材コストを抑えたい」という企業にとって重要な選択肢になっています。
その中でも近年、日本企業から圧倒的な支持を集めているのがベトナムです。
かつてオフショア先といえば、中国の豊富な人材やインドの高度な技術力が主流でした。しかし現在、日本企業の視線はベトナムに移りつつあります。理由は単なるコストの安さではありません。国家レベルでIT産業を支援し、日本市場を強く意識した人材育成が進んでいるからです。
この記事では、ベトナム政府が進めるIT支援策の概要と、それが日本企業にどのようなメリットをもたらすのかを解説します。
この記事はこんな人にオススメ!
1.ベトナムの国家IT戦略の概要
ベトナム政府は、デジタル経済を国家成長の柱と位置づけています。情報通信省(MIC)が発表した「デジタル経済発展計画2021-2030」では、2030年までにデジタル経済がGDPの30%を占めることを目標に掲げ、特にソフトウェア産業とICT人材の育成を最優先課題としています。
国家IT戦略の主なポイントは以下の通りです。
① 大規模なICT人材育成プログラム
- 2030年までにICT人材を300万人に拡大するという明確な数値目標を設定しています。
- ハノイ工科大学、ホーチミン工科大学、FPT大学など主要大学にIT専門学科を増設し、AI、データサイエンス、クラウド、IoTなど先端分野のカリキュラムを導入しています。
- 特に日系企業向けには日本語対応エンジニアの育成クラスが設置され、N2〜N3レベルの取得を目指す教育が進められています。

② IT企業への税制優遇・補助制度
- ソフトウェア開発企業に対し、**法人税の優遇(4年間免税、9年間は50%減税)**を適用。
- 国際品質基準(ISO/IEC、CMMIなど)を取得する際の補助金制度も整備され、品質向上への投資が促されています。
③ 外資誘致と日系企業向け支援
- JETROやベトナム計画投資省(MPI)と連携した日系企業誘致プログラムを実施。
- 進出手続きを簡素化する「One-Stop Service」や、ベトナム国内での法制度・税務相談を無料で支援する窓口を設置。
- 特に日本企業を主要ターゲットとする企業には、日本語対応スタッフ育成費用の一部補助が認められるなど、日系重視の施策が目立ちます。
④ 国内デジタル化の推進
- 電子政府化やスマートシティ計画が全国で進められており、これらのプロジェクトを通じてAIやIoT分野の実務経験を持つエンジニアが増加しています。
- これにより、受託開発だけでなく、上流工程やシステム提案が可能な人材が育成されています。
このように、ベトナムの国家IT戦略は単なる「人材の量」を増やすだけではなく、質の向上と日本市場を意識した体制整備が特徴です。
▼オフショア開発のよくある失敗例について以下の記事で詳しく解説しています▼
オフショア開発に潜む5つのリスク|失敗しないコツを押さえよう!
2.日本企業にとっての3つのメリット
こうした国家戦略は、日本企業にとって次の3つの大きなメリットをもたらします。
① 安定したIT人材供給
ICT人材の総数は、2018年の約88万人から2024年には約150万人まで増加しました。そのうちソフトウェアエンジニアは約53万人に達し、毎年5万人以上のIT関連新卒者が市場に輩出されています。特に20代を中心とした若年層が多く、モダンな技術を吸収するスピードが速いのが特徴です。
② 品質管理・技術力向上の推進
政府支援を受けた開発企業では、ISO/IECやCMMIなど国際標準の品質管理を導入する事例が増えています。AI、クラウド(AWS・Azure)、データサイエンスといった先端分野の研修プログラムも拡充されており、単なる下請けから上流工程への関与が可能な人材が増えています。
③ 日系企業誘致の積極支援
ベトナム政府は日系企業を重要なパートナーと位置づけ、税制優遇やJETROとの連携プログラムを実施しています。これにより、日本語対応が可能なブリッジSEの育成や、日系企業に特化した運用体制を持つ企業が急増しています。
3.データで見るベトナムの成長
ベトナムのICT市場の成長はデータにも明確に表れています。
たとえば、ICT製品やハイテク機器の輸出額は2022年に1,090億ドルに達し、国家輸出全体の約35%を占めるまでに成長しました。サムスンやインテルといったグローバル企業の投資もその後押しとなっています。

また、ベトナム政府は「デジタル経済」をGDPの中核に位置づけ、2022年の15.4%から2030年には30%を目指す国家戦略を打ち出しています。

これらの数字は、単なる一時的なブームではなく、国家主導でIT産業が成長し続けていることを示しています。
4.まとめ|ベトナムは「長期的に信頼できるパートナー」
いかがでしたか?
ベトナムが日本企業から支持される理由は、コストの安さだけではありません。国家戦略としてIT産業を育成し、日本市場に特化した人材供給体制を築いている点が最大の強みです。
若く優秀なエンジニアが安定的に供給され、品質管理も国際標準化が進んでいる現在、ベトナムは長期的に信頼できるオフショアパートナーとしてますます存在感を高めています。
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