
オフショア開発の進め方
こんにちは。ベトナムオフショア開発協会運営事務局です。
オフショア開発会社を数社まで絞り込み、提案書と見積書もそろった。それでも「最後の1社をどう決めればよいのか分からない」と悩むことがあります。
実績、対応技術、開発体制、見積金額などは比較表にできます。しかし、契約後に差が出やすいのは、要件に曖昧さがあったときにどう動くか、問題をどの段階で共有するか、PMやBrSEがどこまで論点を整理するか、といったプロジェクトの進め方です。
こうした部分は、提案書に「対応可能」「日本語対応」「品質管理体制あり」と書かれているだけでは判断しにくいものです。そこで重要になるのが、候補会社との面談で「できますか」と聞くのではなく、「具体的にどう進めますか」と聞くことです。
本記事では、オフショア開発会社を最終選定する場面を想定し、契約後の運営力を確認するための5つの質問を紹介します。見積条件をそろえた後、候補会社の違いをもう一段深く確認したい方に向けた内容です。
最終選定では、実績や価格だけでなく、契約後にどのようにプロジェクトを進めるかを確認することが重要です。立ち上げ、要件整理、PM・BrSE、品質問題、日本側の関与工数について、候補会社に聞きたい5つの質問を整理します。
候補を絞っても、なぜ判断が難しくなるのか
会社選定の初期段階では、各社の違いは比較的見つけやすいものです。得意な技術、開発実績、日本向け案件の経験、拠点、人数、単価など、提案資料から確認できる情報が多いからです。
ところが候補を2~3社まで絞ると、判断が難しくなります。どの会社も一定の実績があり、必要な技術にも対応でき、提案内容も大きくは外していない。その状態で「コミュニケーションは問題ありませんか」「品質は担保できますか」と聞いても、多くの場合は「対応できます」という回答になります。
問題は、その「できます」の中身が会社によって違うことです。
要件に不明点がある場合、日本側から細かな指示が来るまで待つ会社もあれば、不明点を整理し、選択肢を示しながら確認する会社もあります。品質問題が発生した場合も、担当者が個別に対応するのか、決められた報告経路で影響範囲や原因まで整理するのかによって、日本側の負担や判断のしやすさは変わります。
つまり、最終選定で確認したいのは、営業段階の説明のうまさだけではありません。契約後に、どのような考え方と手順でプロジェクトを動かす会社なのかを見る必要があります。
運営力が見極めにくい背景
運営力を見極めにくい理由の一つは、提案書が主に「何ができるか」を説明する資料だからです。
対応可能な技術、開発実績、体制、セキュリティ対策、品質管理の仕組みなどは確認できます。一方で、想定外のことが起きたときに誰が何をするのか、要件が決まっていない部分をどう扱うのか、問題をどの時点で日本側へ共有するのかまでは分からないことがあります。
PMやBrSEも同様です。「経験10年」「日本語能力試験N1」といった情報は参考になりますが、それだけでプロジェクトを安定して進められるかは判断できません。
実際の開発では、仕様の不足、優先順位の変更、遅延の兆候、不具合など、当初の計画どおりに進まない場面が出てきます。そのときに問題を見つけ、整理し、日本側へ伝え、次の判断につなげられるかが重要です。
また、発注側と開発会社の役割分担が曖昧なまま契約すると、「そこまで対応してもらえると思っていた」「そこは日本側で決めてもらう前提だった」という認識違いも起こりやすくなります。
そのため、最終選定では会社概要や実績をもう一度確認するだけではなく、実際の進め方が見える質問をする必要があります。
01立ち上げ後の最初の数週間を、どう進めますか?
最初に確認したいのは、契約後の立ち上げ方です。
「キックオフを実施します」だけでは、実際の進め方は分かりません。キックオフ後、誰が仕様を確認するのか、質問事項をどのように整理するのか、会議をどの頻度で行うのか、進捗や課題をどこに記録するのかまで聞いてみます。
立ち上げ直後は、日本側と開発会社側で言葉の定義、優先順位、完成イメージなどが十分にそろっていないことがあります。この時期に認識を合わせる手順が曖昧だと、小さなズレを抱えたまま実装が進む可能性があります。
確認したいのは「立ち上げ支援がありますか」ではなく、「開始後の1~2週間で何を確認し、誰が参加し、何を記録しますか」という具体性です。
また、定例会を設定するという回答があった場合も、頻度だけでなく中身を確認します。進捗、課題、リスク、仕様変更、次のアクションのうち、何を共有するのか。問題が起きてから報告するのではなく、その兆候を共有する仕組みがあるのかも見たいところです。
02要件が曖昧なとき、誰がどのように整理しますか?
開発前にすべての要件を完全に決め切れるとは限りません。仕様書を作り込んでいても、実装段階で確認事項が出ることはあります。
そこで聞きたいのが、曖昧な要件を見つけたときの動き方です。
誰が不明点を見つけるのか。開発者からPMやBrSEへどのように上げるのか。日本側には単に質問を返すのか、それとも論点や選択肢を整理して確認するのか。回答を待っている間、その部分の作業をどう扱うのか。ここまで聞くと、日常的な進め方が具体的に見えてきます。
重要なのは、開発会社に要件整理をすべて任せることではありません。日本側が決めるべきことと、開発会社側で整理・提案できることの境界を確認することです。
たとえば、業務上の優先順位や最終的な仕様判断は日本側が担うとしても、「この仕様ではAとBの二通りに解釈できます」「Aの場合はこの影響があります」と整理してもらえれば、判断はしやすくなります。
反対に、曖昧な部分があっても確認されないまま実装が進む体制では、後から手戻りが増える可能性があります。
03予定しているPM・BrSEは、難しい場面でどのように対応してきましたか?
PMやBrSEを確認するとき、日本語力や経験年数だけで終わらせないことも大切です。
可能であれば、実際に参加予定のPMやBrSEにも面談へ入ってもらい、これまで難しかった場面でどのように対応したかを聞きます。
たとえば、「仕様調整が難しかったとき、何を整理しましたか」「遅延の可能性が出たとき、どの段階で誰に共有しましたか」「開発チームと顧客側の認識が合わなかったとき、どのように調整しましたか」といった聞き方です。
ここで確認したいのは、成功談の大きさではありません。問題をどう捉え、誰と調整し、何を決めたのかを順序立てて説明できるかです。
BrSEは「日本語が話せる人」としてだけ見ると、選定を誤りやすくなります。仕様の背景を理解し、開発チームへ伝え、日本側へ必要な確認を返す橋渡し役として機能するかを見る必要があります。
また、営業担当者の説明だけで判断しないことも重要です。契約後に日々やり取りする人が別であれば、選定時の印象と開始後の運営に差が出る可能性があります。候補を絞った段階で、実際の窓口候補と会話できるか確認しておきましょう。
04品質問題が起きたとき、最初に誰が何をしますか?
「品質管理を徹底していますか」と聞けば、多くの会社は「はい」と答えるでしょう。そこで、問題が起きた後の初動を具体的に聞きます。
不具合を発見したとき、誰が一次確認をするのか。日本側への報告は誰が行うのか。影響範囲をどのように確認するのか。原因分析と再発防止をどの段階で行うのか。こうした流れを説明してもらいます。
ポイントは、品質を「不具合を出さないこと」だけで評価しないことです。開発では問題が発生する可能性をゼロにはできません。そのため、問題を早く見つけ、必要な人へ共有し、影響を抑え、同じ問題を繰り返さないための流れがあるかを見る必要があります。
「コードレビューをしています」「テスト担当がいます」という説明に加えて、問題が起きた場合の報告ルートや判断手順まで確認すると、品質管理が担当者個人の経験に依存しているのか、チームとして運用されているのかを判断しやすくなります。
さらに、「どの程度の問題ならすぐに日本側へ連絡するのか」も確認しておくとよいでしょう。問題の大小にかかわらずすべて報告すればよいわけではありませんが、何を重大と判断するかの基準が双方でずれていると、発注側が重要と考える情報が遅れて届くことがあります。
05日本側は、週にどの程度、何に関与する必要がありますか?
最後に聞きたいのが、日本側に必要な関与です。
オフショア開発を利用しても、日本側の作業がゼロになるわけではありません。優先順位の判断、仕様確認、成果物レビュー、受入、社内調整など、日本側が担う仕事は残ります。
そこで、「こちらは何をすればよいですか」ではなく、「誰が、どの会議に参加し、どの判断を行い、どの資料を確認する必要がありますか」と具体的に聞きます。可能であれば、想定される頻度や必要な工数も前提条件と一緒に示してもらいます。
案件開始前に正確な時間まで決めることが難しい場合でも、関与が必要になる場面を説明できるかどうかは確認できます。
この質問が重要なのは、発注側の負担も含めて体制を比較できるからです。
見積金額が低くても、日本側が日々細かな指示を出し、進捗を確認し、仕様を細かく整理しなければ進まないのであれば、想定していた外部活用にならない可能性があります。
反対に、日本側で必要な判断や確認事項が最初から明確であれば、社内の担当者や時間を準備しやすくなります。選定時には、開発会社の人数だけでなく、自社側にどの程度の体制が必要になるかもセットで確認してください。
5つの質問を使うときの注意点
5つの質問を使うときは、候補会社ごとに質問を変えすぎないことが重要です。
同じ質問を各社に聞き、「回答が具体的か」「担当者と役割が明確か」「問題が起きた場合の動きまで説明されているか」「日本側に求めることが明確か」といった観点で記録すると、面談後に比較しやすくなります。
また、回答の流暢さだけで評価しないようにします。日本語が上手で説明が分かりやすいことは重要ですが、それとプロジェクトを安定して運営できることは同じではありません。
見るべきなのは、回答に具体性と一貫性があるかです。
たとえば、PMは「問題があればすぐ報告する」と説明しているのに、品質管理の説明では報告経路が決まっていないのであれば、さらに確認が必要です。「柔軟に対応します」「ケースバイケースです」といった回答が続く場合も、実際には誰が判断するのかまで掘り下げてみましょう。
候補会社への質問を通じて、「この会社を使う場合、自社側では誰が何を担う必要があるのか」も同時に整理してください。それが見えれば、見積金額だけでは分からない運営のしやすさも比較できます。
もう一つ注意したいのは、開発会社だけを評価して終わらないことです。発注側にも、優先順位を決める人、仕様を判断する人、成果物を確認する人などが必要です。外部へ開発を委託することは、発注側の判断まで外へ移すことではありません。
まとめ
オフショア開発会社の最終選定では、実績、技術、価格を比較するだけでは、契約後の運営まで見通せないことがあります。
そこで確認したいのが、「立ち上げ後の最初の数週間」「曖昧な要件への対応」「PM・BrSEの問題対応」「品質問題発生時の初動」「日本側に必要な関与」の5点です。
共通しているのは、「できますか」ではなく「どう進めますか」と聞くことです。具体的な進め方を聞けば、提案書だけでは見えにくかった役割分担、問題への向き合い方、日本側の負荷が見えやすくなります。
すでに候補会社を数社まで絞っている場合は、次回の面談でこの5つの質問を同じ条件で投げ、回答を記録してみてください。見積条件をそろえて価格や体制を比較した後、さらに「この会社と実際にプロジェクトを運営できるか」を確認する。この二段階で考えることで、最終的な選定理由を社内にも説明しやすくなります。






