
オフショア開発を進める中で、「ルールは共有したはずなのに、なぜか守られない」という課題は珍しくありません。
アクセス制限、アカウント管理、ソフトウェア利用、報告手順…。
どれも守られれば安全ですが、現場で“習慣”として定着しなければ形骸化してしまいます。
この記事では、ルールが現場で守られない背景と、実際に“運用されるルール”を作るための仕組みを整理します。
① 「理解したつもり」で終わる
ルールを配布して説明しても、それが“行動レベル”まで落ちていないことがあります。
特にオフショアでは、言語の違いや文化のギャップにより、「なんとなく理解した気になっている」状態が起きやすくなります。
② 現場の実態とルールにズレがある
「現場のツール構成」「普段の作業の流れ」と合わないルールは、実行が難しくなります。
実態と乖離したルールは、「守りたくても守れない」仕組みを生み出します。
③ 違反しても誰も気づかない
監査やチェックがなければ、ルールは自然と形骸化します。
「見つからないから大丈夫」という心理が働くと、徐々に遵守率が下がり、それが“当たり前”になってしまいます。
④ 守ってもメリットを感じない
人は、自分の行動によって何が改善されているか実感できないと、習慣を維持できません。
セキュリティや品質ルールは特に“目に見えにくい”ため、
「守る意義が実感できない」ことが守られない理由になります。
オフショア現場でルールを定着させるには、単なる“規程の配布”ではなく、教育・運用・確認の三位一体の設計が必要です。
① ルールは「現場で実行できる形に翻訳する」
ルールをそのまま伝えるだけでは不十分です。
現場チームの作業フローに合わせて、“どう行動すればよいか”まで落とし込む必要があります。
「禁止ソフトを入れない」
→ どの場面で禁止なのか、代替手段は何かを示す
「本番データをコピーしない」
→ テストデータ生成の手順を用意する
「パスワード管理ルールを守る」
→ 具体的なツールや管理方法を推奨する
ルールを行動に翻訳することが、最初の定着ポイントです。
② 教育は“一度教えて終わり”にしない
セキュリティや品質ルールは、忘れた頃に違反が起きます。
そのため、継続的に意識を棚卸しする教育サイクルが必要です。
「覚えているか?」ではなく、「現場で実践できているか?」を定期的に確認することが重要です。
③ “守られているか”を可視化してフィードバックする
ルールが守られるかどうかは、監査・チェックの仕組みが大きく影響します。
チェックがあることで、「守らなければならない」ではなく、「みんなで守ることが当然になる」文化が生まれます。
また違反が起きた際は、「誰が悪いか」ではなく「なぜ起きたか」「どう防ぐか」をチームで議論することが重要です。
ルールを作っても、文化が伴わなければ長続きしません。
文化づくりの鍵は、「守れるように支援すること」です。
① 守りやすい環境を作る
アクセス権限やツールの設定整備、作業フローの統一など、「守った方が楽になる仕組み」を作ると、遵守率は確実に上がります。
② ミスを“共有しても良い”空気をつくる
ルール違反の多くは、悪意ではなく誤解や不注意から生まれます。
報告した人が責められない文化があることで、改善の速度がチーム全体で加速します。
③ ルールを“組織の価値観”として共有する
単なる規則ではなく、「守ることで顧客の信頼が守られる」、「長期契約につながる」、「チームの評価につながる」といった意味付けをして共有することで、自発的な遵守につながります。
オフショア開発でルールが守られない原因は、個人の問題ではなく“仕組みと文化の不足”にあります。
この4つを揃えることで、ルールは“紙の上の規則”ではなく、現場で運用され続ける仕組みとして定着します。
ベトナムオフショア開発協会では、
日越の協業を進めるうえで役立つ考え方や、現場に基づいた知見を日々発信しています。
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こんにちは。ベトナムオフショア開発協会、理事のグェン トアン アンです。
ベトナムをはじめ、海外でのオフショア開発はコスト最適化やリソース確保の手段として一般化しています。しかし、その普及とともに日本企業が直面しているのが、「チームに責任感が育たない」という問題です。
「指示した通りには動くが、自ら提案してくれない」
「決められた作業だけをこなしてしまい、改善が進まない」
「問題が起きても報告が遅れ、自分ごとになっていない」
PMやBrSEの多くが同じ声を上げています。
こうした課題の根本には、日本側が無意識に続けてしまう“トップダウン型の仕事の進め方”があります。
この記事では、オフショアチームの潜在力を引き出し、主体性と責任感を育てる「巻き込み型マネジメント」について解説します。
ベトナムを含む多くのアジア圏では、「上司の指示を正しく実行すること」が高い評価につながります。そのため、指示された以上の判断をする必要性を感じにくく、自ら動くインセンティブが生まれません。
細かい指示に従っていれば、もし問題が起きても「指示の通りにやった」と主張できます。
これは、責任を負わずに済む最も安全な行動です。
結果として、意思決定や改善提案をしようとする動機が育ちません。
仕様書だけが渡され、「なぜこの機能を作るのか」「ユーザーにどんな価値があるか」
という背景が伝わらないケースでは、タスクは単なる作業として処理されます。
目的が見えないため、手戻り防止や改善への意識が生まれにくくなります。
トップダウン型から脱却し、エンジニアが自律的に動けるようになるためには、
プロジェクトの上流からチームを巻き込むことが不可欠です。
以下では、具体的な4つのアプローチを紹介します。

顧客の声・課題・背景を伝える
仕様書だけを渡すのではなく、顧客がなぜそれを求めているのかを共有します。可能であれば、顧客からのフィードバックや市場背景も伝えると効果的です。
タスクに「目的」を必ず添える
「この機能は何の問題を解決するため?」「誰にとっての価値?」というWhyを伝えると、メンバーは成果物の本質を理解し、認識のズレを自ら補完するようになります。
効果:目的理解が“自分で考える責任”を生む。

見積もりを「チーム自身に作らせる」
日本側が工数を決めてしまうと、チームはその枠に従うだけになりがちです。チーム自身に見積もらせ、その根拠を説明させることで、コミットメントの主体が自分たちに移ります。
タスクの割り振りは現場に委ねる
大枠のタスクだけを提示し、細かい分割や担当決めは現地リーダーに任せます。現場の能力を最も理解しているのは現場のリーダーだからです。
効果:計画の「オーナーシップ」が責任感を生む。
多くのベトナムチームは「失敗=評価が下がる」と捉える傾向があります。この状態では、リスクを避け、指示通りにしか動かなくなってしまいます。

心理的安全性をつくる
失敗時に個人を責めるのではなく、「なぜ起きたのか」「どう改善するか」をチームで議論するスタイルに変えます。
早期報告を“評価ポイント”にする
失敗の事実よりも、報告の速さを評価する仕組みにします。「ミスは仕方ない。報告の遅れはリスク。」という価値観が浸透すれば、報告行動は劇的に改善します。
改善提案を義務化
遅延や問題が起きた場合、「次にどうするべきか?」を本人に考えさせ、提案させます。
効果:失敗を“自分の責任で改善する経験”が成長を促す。

最終レビュー権限を委譲
現地リーダーに、品質レビューや納品判断の権限を与えます。
「任されている」という感覚は、最も強い責任感を生みます。
意思決定の場に招く
重大な判断を日本側が単独で行うのではなく、まず現地リーダーの意見を求め、議論に参加させます。
判断の理由を言語化させる
もし判断が誤っていた場合は、「なぜそう考えたか?」を分析し、意思決定の質を高める機会にします。
効果:リーダーが“本当のリーダー”として育つ。
オフショアチームに責任感を育てるには、命令→実行のトップダウン型では足りません。
これらを通じて、チームは「受け身の作業者」から、自律して動ける開発パートナーへと進化します。
巻き込み型マネジメントは、短期的な工数削減以上に、プロジェクトの品質・スピード・改善力を高める“最も効果的な投資”です。
グェン トアン アン(ベトナムオフショア開発協会 理事)
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こんにちは。ベトナムオフショア開発協会、理事の井上 拓也です。
ベトナム人ITエンジニアにとって、日本語能力試験(JLPT)N2の取得は、日本市場でキャリアを築くうえで大きな目標です。
多くの企業が採用基準として「N2以上」を掲げており、履歴書にその資格が記されていれば採用のハードルは一気に下がります。
しかし、実際のプロジェクト現場では、**「N2を持っている=業務で通用する日本語が使える」**とは限りません。
N2はあくまで“言語知識の証明”であり、“仕事を進めるための日本語運用能力”とは別物です。
資格をゴールにしてしまうと、顧客やチームメンバーとの認識のズレ、指示の誤解、報告の遅れなど、プロジェクト全体の生産性を下げる要因になります。
この記事では、N2合格のその先にある“生きた日本語力”を育てるための3つのステップを解説します。
多くのベトナム人エンジニアは、文法・語彙・読解といった学習でN2に到達します。
一方で、現場で必要とされるのは、相手の意図をくみ取り、状況を整理して伝える力です。
例えば、こんな場面を見聞きしたことはないでしょうか。
「朝からがんばって対応していますが、XX機能でエラーが出ていて……」
一見まじめな報告に見えても、管理者が欲しいのは感想や経緯ではなく、「何が」「いつから」「どの範囲に影響しているか」という結論です。
つまり、求められているのは“構造化された説明力”。感情ではなく、結論先出しで要点を伝える訓練が必要です。
日本側:「この画面は以前開発した画面と同じようにつくってください。」
ベトナム側:「わかりました(わかっていない)」
日本では「高品質」「納期厳守」は当然の前提として捉える傾向がありますが、海外チームにとっては明示されなければ期待値は共有されません。
このズレが後工程での修正や手戻りを生み、工数とコストを増大させます。
同じ言葉でも、文化や業務経験によって理解が異なる場合があります。たとえば「簡単に使えるUI」という表現は、日本側では直感的操作を指しますが、海外チームではデザインがシンプルであることと解釈することがあります。

まず必要なのは、日本のビジネス規範を知ることです。
文法よりも先に、「どんな言葉が信頼を生むか」を理解することが重要です。
研修やOJTで以下のテーマを扱うと効果的です。
これらを体系的に学ぶことで、単なる「話せる」から、「相手の立場で伝えられる」に変わります。
特にオフショア開発では、言葉の使い方がそのまま信頼の印象につながるため、ソフトスキル教育を日本語教育と並行して行うことが理想です。

JLPTが一般的な言語能力を測る試験であるのに対し、BJT(Business Japanese Proficiency Test)は、実際のビジネス現場での日本語運用力を評価するテストです。
BJTでは、電話応対・ビジネスメール・会議でのやり取りなど、“仕事としての日本語”が出題されます。
受験を通じて、場面ごとの表現選択や、相手意識を持った発話を身につけられる点が大きな利点です。
また、企業研修でBJTの過去問題をケース教材として扱うのも効果的です。
単なる試験対策ではなく、「この状況ならどう言うか」を議論する過程が、実践的な言語感覚を養います。

最終的に重要なのは、会話の中で相手の意図を読み取る力です。
単に正しい日本語を話すだけではなく、「なぜ相手がそう言ったのか」「何を求めているのか」を推測し、対話の中で認識をすり合わせることができて初めて“伝わる日本語”になります。
初期段階ではテンプレートを使って練習するのが有効です。
報告:「結論から申し上げますと、~です。」
相談:「~という状況ですが、A案とB案どちらがよいでしょうか?」
確認:「認識をすり合わせたいのですが、~という理解で合っていますか?」
こうした定型文を繰り返し使うことで、会話の型が身につき、徐々に自分の言葉で応用できるようになります。
ベトナム人エンジニアにとって、N2は“入り口”にすぎません。
本当に価値のある日本語力とは、相手と認識を合わせ、問題を前倒しで防ぐ力です。
この3ステップを重ねることで、言語は単なるツールから「信頼を生み出すスキル」へと変わります。
オフショア開発の現場に求められているのは、N2ホルダーではなく、“伝わる日本語”でチームを動かせるエンジニアなのです。。
井上 拓也(ベトナムオフショア開発協会 理事)
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こんにちは。ベトナムオフショア開発協会事務局です。
オフショア開発で最も恐ろしいトラブルは、「問題が起きること」ではありません。
本当に怖いのは、問題が起きたあとに報告が遅れることです。
報告が1日遅れただけで、影響範囲が何倍にも広がることがあります。
しかし現場では、「まだ確認中だから」「自分で解決できるかもしれない」といった心理から、報告が遅れるケースが少なくありません。
この記事では、報告の遅れが招く“見えない損失”と、それを防ぐための「報告文化」をどう育てるかを考えます。
目次.
1.なぜ報告が遅れるのか
2.“報告の遅れ”がもたらすコスト
3.報告文化を育てる3つの仕組み
4.報告が早いチームは、信頼も速い
まとめ

報告の遅れは怠慢ではなく、心理と文化の構造から生まれます。
①「怒られるのが怖い」心理
トラブルを報告すると、自分の評価が下がるのではないか――。
そう思ってしまう職場では、報告の遅れが常態化します。
特にオフショアでは、日本側が感情を抑えながらも厳しく反応することで、現地メンバーが“沈黙”を選んでしまうことがあります。
② “報告のタイミング”の曖昧さ
「どの段階で報告すべきか」が明確でないと、現場は判断を迷います。
結果として、「もう少し調べてから」「明日まとめて報告しよう」と後回しにされる。
その間に、データが失われたり、バグが本番環境まで流れたりすることもあります。
③ 言語・文化的な遠慮
英語や日本語で報告する際、「まだ確証がない情報を伝えるのは失礼」と感じる人も多いです。
ベトナムやインドなどでは、“確実な結果だけを報告する”文化が根づいており、「途中経過を共有する」という習慣が少ないことも影響します。

報告が遅れることで発生する損失は、金銭的なものだけではありません。
たった一度の報告遅れでも、「もう任せられない」という印象を残すことがあります。
オフショア開発における信頼とは、報告の早さそのものなのです。
① 報告ルールを「形式」でなく「約束」にする
「何を」「いつ」「誰に」報告するかを明確に定め、文書化しておくことが第一歩です。
しかし、それを単なる社内ルールとして配布するだけでは意味がありません。
重要なのは、“報告すること自体が信頼行為である”という認識をチーム全体で共有することです。
「早く報告してくれてありがとう」という文化が根づくと、報告の質は自然と上がります。
② “小さな報告”を仕組み化する
報告を「大きな出来事の時だけ」行うルールにしていると、情報はすぐに滞ります。
こうした“軽い報告習慣”が、トラブル初期の早期発見につながります。
報告のハードルを下げることで、自然にスピードが上がります。
③ 報告を「評価」に組み込む
「報告はミスの証」ではなく、「チームを守る貢献」として評価する仕組みが有効です。
たとえば、月次レビューや個人評価の項目に“報告・共有の姿勢”を含めることで、
現場の意識は大きく変わります。
評価される行動として定義すれば、報告の精度とタイミングは一気に改善します。
報告のスピードは、チームの信頼のスピードです。
問題が発生しても、即座に報告・共有・対応ができる体制を持つチームは、必ず評価されます。
逆に、報告が遅いチームは「何かあっても隠されるかもしれない」という不安を生み、長期契約を遠ざけます。
信頼を構築するうえで大切なのは、「完全にトラブルをなくすこと」ではなく、
“起きたことを素早く伝える勇気を支える文化”を育てることです。
オフショア開発では、距離や言語の違いよりも、報告の遅れがトラブルを大きくします。
その背景には、怒られる恐怖、報告基準の曖昧さ、文化的な遠慮があります。
だからこそ、
この3つの仕組みで、「報告の速さ=信頼の速さ」をチーム文化として定着させることが重要です。
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オフショア開発を検討する企業が、最初に重視するポイントは「技術力」や「コストパフォーマンス」であることが多いでしょう。
しかし、実際に発注を続けるかどうかを左右するのは、信頼できる体制があるかどうかです。
エンジニアのスキルが高くても、情報管理や報告体制が脆弱であれば、プロジェクトは一瞬で崩れます。
ここでいう“信頼”とは、人間関係的な好感度ではなく、再現性と透明性を備えた仕組みのこと。
この記事では、技術力だけでは選ばれない理由と、信頼されるオフショアチームに共通する条件を整理します。
多くの発注企業が経験するのは、「コードは上手いのにプロジェクトが不安」という違和感です。
原因は、技術そのものよりも管理の仕組みが見えないことにあります。
たとえば…
こうした基本的な“管理の透明性”が見えないと、どれだけ技術力があっても信頼にはつながりません。
オフショア開発は、距離と文化の壁がある分、信頼は成果物だけでは測れないのです。
信頼される開発チームに共通しているのは、情報の流れとリスクの流れが見える化されていることです。
つまり、トラブルが起きても「どこで、誰が、どのように対応するか」が明確に定義されている状態です。
たとえば次のような体制は、特に評価されやすいポイントです。
このような基本を仕組み化して初めて、技術力を安定的に提供できる土台が整います。
発注側がチームを選定するとき、GitHubの実績やポートフォリオを重視する傾向があります。
もちろん技術を可視化することも大切ですが、プロジェクトの継続性を考えると、
“信頼を再現できるかどうか”がもっと重要です。
再現性のある信頼とは、次の3つがそろった状態を指します。
特定の担当者に依存せず、誰が入っても同じ品質・同じスピードで運用できる――
それが「スキル」ではなく「信頼の再現化」です。
ベトナムをはじめ、オフショア主要国の技術水準は年々向上しています。
React、AWS、AI、モバイルなど最新技術を扱えるチームは珍しくなくなりました。
だからこそ今、差がつくのは“運用品質”と“信頼設計”の部分です。
クライアントは、単に「安く作れるパートナー」ではなく、「安心して任せられる開発パートナー」を求めています。
つまり、これからの競争軸は価格でもスキルでもなく、信頼の仕組みなのです。
オフショア開発の成功は、個々の技術力ではなく、チーム全体で信頼を設計できるかどうかにかかっています。
これらが整ってはじめて、「技術が活きる環境」が成立します。
優秀な人がいるチームより、信頼を積み上げる仕組みを持つチームこそ、長く選ばれ続けるのです。
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こんにちは。ベトナムオフショア開発協会事務局です。
オフショア開発を続けていると、必ず直面するのが「属人化」の問題です。
あるエンジニアが抜けた瞬間に仕様がわからなくなる。
チームリーダーが交代すると、品質や進め方が急に不安定になる。
こうした“個人依存”は、国内開発でも課題ですが、言語・文化の壁があるオフショアでは一層深刻です。
プロジェクトを「人」ではなく「仕組み」で動かすためには、ナレッジを組織として継承する仕組みが欠かせません。
本稿では、属人化が起きる背景と、それを防ぐための仕組みづくりを具体的に解説します。

① 人の流動性が高い
海外拠点では人材の入れ替わりが早く、特に若手エンジニアは数年で転職するケースが一般的です。
日本企業が求める「長期で育てる」スタイルが通用しにくく、個人に依存する知識が引き継がれにくい構造になっています。
② 言語の壁で情報が止まる
ブリッジSEやリーダーが日本語を理解できても、他の開発者は英語や母国語でしか情報を把握できません。
日本語の仕様書やレビューコメントが現地に伝わらず、結果として情報の翻訳・伝達コストが属人化の温床になります。
③ ドキュメント文化の差
日本企業は仕様や議事録を詳細に残す傾向がありますが、海外では「話して決める」「SlackやZaloなどチャットで済ませる」文化が強いこともあります。
文書化の粒度が異なることで、「どこに何が書いてあるか分からない」状態が発生しやすくなります。

属人化を防ぐには、単にドキュメントを増やすだけでは不十分です。
ナレッジ共有は次の3つの層で設計することが重要です。
(1)プロジェクトナレッジ(案件固有の情報)
要件定義書、設計書、テストケース、レビュー記録など、案件ごとの成果物。
これらは共通のストレージ構造と命名規則を定め、いつでも検索・再利用できる状態にします。
代表的な方法としては、
といった手法が有効です。
(2)技術ナレッジ(開発標準・再利用情報)
共通設計テンプレート、コーディング規約、レビュー基準、テスト観点集など、横断的に使う知識群です。
これを整備することで、担当者が変わっても同じ品質で開発を再現できます。
CMMIやISO9001などの品質マネジメントを参考に、「プロセスごとに最低限必要なアウトプットを定義する」仕組みが効果的です。
(3)組織ナレッジ(文化・ノウハウ・教訓)
プロジェクトで得た教訓や改善策、FAQ、トラブル事例などをナレッジレビュー会や振り返り会で共有します。
単なる「反省会」ではなく、改善項目を文書化・仕組み化して次の案件に適用するのがポイントです。
ベトナムの多くの開発企業では、定期的な「Lesson Learned」レビューを文化として組み込んでおり、これが属人化防止に大きく貢献しています。
ナレッジを共有しても、探せなければ意味がありません。
そこで重要なのが、「情報をどこに、どう蓄積するか」を構造化することです。
① データ分類と命名ルール
同じフォルダに設計書、議事録、スクリーンショットが混在している状態は最悪です。
を徹底するだけでも、引き継ぎ効率は大幅に上がります。
② “暗黙知”を形式知に変える
属人化の大半は「頭の中にある知識」が外に出ていないことに起因します。
レビューコメント、定例会議のQ&A、チャット上のやり取りなどを定期的にまとめて記録化することで、属人知を組織知に変換できます。
SlackやTeamsのスレッドを週単位でまとめてWiki化するなど、軽い運用から始めても効果的です。
③ 引き継ぎの“仕組み”を標準化
担当者交代時に慌てて引き継ぐのではなく、「最初から引き継ぎを前提にドキュメントを残す」設計思想が必要です。
たとえば、
こうした手順をプロセス標準として組み込むことで、属人化リスクを制度的に下げられます。
ナレッジ共有の仕組みは、ツールだけで完結しません。
重要なのは、「情報を動かす文化」をどう作るかです。
このような小さな習慣を積み重ねることで、「属人化しないチーム文化」が根づきます。
特にBrSEやQAリーダーが“情報のハブ”として動くと、現場全体が安定します。
オフショア開発では、属人化は避けて通れないリスクです。
しかし、プロジェクト・技術・組織の3層でナレッジを整理し、情報の構造化と共有文化を育てることで、そのリスクは大幅に軽減できます。
人が変わっても品質を維持できるチームは、単にスキルが高いのではなく、「ナレッジが生きている組織」です。
オフショア開発を長期的な戦略として成功させるために、“引き継がれる仕組み”を今のうちから設計しておくことをおすすめします。
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こんにちは。ベトナムオフショア開発協会、理事のLE ANH TUANです。
オフショア開発では、同じ言葉を使って話していても、成果物が期待と大きく異なることがあります。この原因の多くは、「認知のズレ」にあります。
認知のズレとは、双方が無意識に持っている“見えない前提”の違いによって発生する誤解です。
言語や文化、経験の違いによって生まれるこのズレは、プロジェクト後半で手戻りや品質低下を招くことがあります。
この記事では、認知のズレが発生する背景、実例、そしてすり合わせの具体的な方法を詳しく解説します。

例えば「テストをしてください」という指示一つでも、日本の開発者は「単体テストから結合テストまで網羅的に行う」と考えるかもしれません。一方、海外チームは「ユニットテスト中心で実施」と解釈することがあります。
どちらも間違いではありませんが、前提が異なるために結果がずれてしまいます。
日本では「高品質」「納期厳守」は当然の前提として捉える傾向がありますが、海外チームにとっては明示されなければ期待値は共有されません。
このズレが後工程での修正や手戻りを生み、工数とコストを増大させます。
同じ言葉でも、文化や業務経験によって理解が異なる場合があります。たとえば「簡単に使えるUI」という表現は、日本側では直感的操作を指しますが、海外チームではデザインがシンプルであることと解釈することがあります。

プロジェクト開始時に、双方の前提を明確にして共有することが重要です。
仕様書だけでなく、完成イメージやモックアップを提示することで、認識のズレを減らすことができます。
進捗に応じて定期的なレビューを行い、早期に認知のズレを発見します。
プロジェクト内で使用する専門用語や略語を整理してチーム全体で共有することで、誤解を防ぎます。
ある企業で、「ユーザーが簡単に操作できる検索機能を作る」という依頼を出しました。日本側では直感的な操作と高速検索を想定していましたが、海外チームはUIがシンプルであればよいと解釈してしまい、検索速度の最適化は行われませんでした。
後からこの差異が発覚し、追加工数とコストが発生しました。
このケースでは、初期段階で「操作のしやすさ」「検索速度」の両方を明示して共有していれば防げた問題です。

認知のズレは一度の打ち合わせでは解消できません。継続的に確認を行う仕組みが必要です。
これにより、プロジェクト後半での大きな手戻りを防ぎ、効率的な開発が可能になります。
オフショア開発では文化や経験の違いによって「認知のズレ」が生じやすく、これが手戻りや品質低下の原因になります。
重要なのは、見えない前提を可視化し、定期的にすり合わせることです。
この習慣を取り入れることで、オフショア開発の成功率は大幅に向上します。、プロジェクト後半での大きな手戻りを防ぎ、効率的な開発が可能になります。
次のプロジェクトから、まず「私たちの前提は一致しているか?」を確認することをおすすめします。
LE ANH TUAN(ベトナムオフショア開発協会 理事)
ベトナムオフショア開発協会では、
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こんにちは。ベトナムオフショア開発協会事務局です。
オフショア開発を検討するとき、「国内開発と同じ体制で進めればいいのでは」と考える企業は少なくありません。
しかし、実際には国内開発では見えにくい“境界”がいくつも存在します。
言語・文化・作業時間・開発プロセスの前提――それらの違いを橋渡ししなければ、プロジェクトはすぐに認識齟齬を起こします。
その境界を埋めるのが、オフショア開発に特有の職種たちです。
本稿では、国内開発には登場しにくいものの、海外チームと連携するうえで欠かせない代表的なメンバーと、その役割の背景を解説します。
オフショア開発を語るうえで欠かせない存在が「ブリッジSE(Bridge System Engineer)」です。
BrSEは単なる通訳ではなく、「ビジネス要求を技術言語に変換し、逆方向にも翻訳するエンジニア」です。
日本側の顧客やPMが語る要件には、しばしば“日本的な曖昧さ”が含まれます。
「普通はこうするよね」「細かい部分は任せる」といった言葉を、現地の開発者がそのまま理解するのは不可能です。BrSEはこうした言葉の背景を読み取り、目的・前提・制約を整理して現地メンバーに伝えます。同時に、現地チームから上がる質問やリスクを日本語で再構成し、意思決定者に報告します。
この“橋渡し”がなければ、進捗は見えていても、成果物の中身がずれていく。
BrSEは単なる翻訳者ではなく、文化の違いによる“認識の歪み”を修正する調整者なのです。
BrSEが主に言語とマネジメントの橋を担うのに対し、BSE(Base SE)は技術的な橋を担います。
彼らは詳細設計やレビューを中心に、開発者が迷わないよう技術面の方向性を示します。
国内では、経験豊富なSEやチームリーダーが自然とこの役割を果たしますが、オフショアでは技術スタックやフレームワークの理解度、ドキュメント形式の違いが障害になります。
BSEが存在することで、日本の開発標準を現地仕様に落とし込み、設計品質を均一化することが可能になります。
たとえば、設計レビューで「この命名ルールはチーム全体で統一しましょう」「例外処理の方針を確認しておきましょう」と指摘するのもBSEの仕事。
チームの技術的な共通言語を整備する役割を担います。
オフショア開発では、テスト工程にQC(品質管理)とQCL(品質管理リーダー)という専任職種を置くことが一般的です。QCは単体・結合・システムテストの観点を作成し、テストケースを設計・実施します。QCLはその品質を横断的にチェックし、欠陥傾向を分析します。
国内開発では、開発者自身がテストを兼任することが多く、テスト担当を独立させるケースは限られます。しかし、海外チームでは「テストの粒度」や「合格基準」の感覚が異なるため、第三者による品質検証が不可欠です。
特にベトナムでは、日本語での読み書きができるQCメンバーが多く、翻訳を介さずにテストケースやバグ報告を扱えるのが強みです。また、彼らは単にバグを見つけるだけでなく、「再発防止のためにどの設計段階で止められたか」を振り返る文化を持っています。
その結果、テストチーム自体が“品質教育の場”として機能します。
QCが「成果物の品質」を担保するのに対し、QAは「プロセスの品質」を監視します。
各工程が計画どおり実施されているか、レビュー・テストが適切に行われているかを定期的に監査し、問題があれば是正を指示します。
国内の中小規模開発では、QAを専任で置くことは稀です。しかし、オフショアでは国や拠点ごとに複数プロジェクトが同時進行するため、標準化と再現性の確保が成功の鍵になります。
QAはその要となる存在で、チェックリストの運用、品質レポートの作成、振り返りの実施などを通じて、プロジェクト横断で改善を促します。たとえば、過去の案件で発生した障害を横展開し、次の案件では事前チェックに組み込むといったサイクルを構築します。
QAがいることで、属人的な品質管理から脱却できるのです。
オフショア開発では、BrSEが通訳を兼ねることもありますが、全てを担うのは現実的ではありません。
そこで登場するのが、会議の逐次通訳やドキュメント翻訳を専門に行うコミュニケーターです。
議事録や仕様書、テスト報告書など、正確な翻訳を必要とする文書は膨大です。ここで誤訳が生じると、要件や優先度の認識が狂い、手戻りが発生します。コミュニケーターが存在することで、BrSEやPMが調整業務に専念でき、プロジェクト全体の情報伝達スピードが格段に上がります。
また、最近では翻訳ツールの精度向上により、「機械翻訳+人のレビュー」という効率的な分業も可能になっています。
テキスト量が膨大なオフショア開発では、この役割が地味に大きな成果を生むのです。
開発拠点が複数あり、プロジェクトが並行して動く企業では、QAリーダーやPMO(Project Management Office)を置く体制が一般的です。PMOはプロジェクト全体を俯瞰し、進捗・課題・リスクを横断的に管理します。一方でQAリーダーは品質の基準を統一し、複数チーム間で改善サイクルを回します。
オフショア開発では、個々のチームが独立して動くと、品質や管理レベルがバラバラになります。PMOやQAリーダーがいることで、チームをまたぐ共通ルールと透明性を保つことができます。
国内の大手SIerにおける“標準化部門”のような役割を、オフショア体制でも再現するのが理想です。
これらの職種は、国内開発では「コスト要因」に見えるかもしれません。
しかしオフショア開発においては、距離・言語・文化という3つの壁を越えるための装置です。
BrSEが言語の壁を、BSEが技術の壁を、QC・QAが品質の壁を、それぞれ支えています。
この“装置”がなければ、わずかな誤解が雪だるま式に膨らみ、最終的には「安くない」「早くない」「品質が低い」という結果に陥ります。オフショア成功の鍵は、メンバーを減らすことではなく、必要な役割を適切に配置して協働させることなのです。

オフショア開発は単なるコスト削減の手段ではなく、多様な専門性で補い合うチームづくりの取り組みです。国内と同じ感覚で体制を組んでしまうと、すぐに見えない摩擦が発生します。BrSE、BSE、QC、QA、コミュニケーター、PMO――これらの職種は、「距離を埋めるためのコスト」ではなく「信頼を築くための投資」として位置づけるべきです。
オフショア開発を検討する際は、“誰がコードを書くか”だけでなく、“誰が理解をつなぐか”を考えること。そこにこそ、成功するチーム設計の第一歩があります。
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こんにちは。ベトナムオフショア開発協会の岸菜です。
グローバル化が進む現代において、一つの会社に勤めながら別の仕事を持つ「副業」は、多くの国で当たり前の働き方になりつつあります。
このコラムでは、海外企業社員の副業の実態を広く見渡し、特に経済成長著しいベトナムの事例を掘り下げ、日本の状況と比較することで、新しい働き方のヒントを探ります。

近年、欧米を中心に「ギグエコノミー」という言葉が浸透しています。これは、インターネットを通じて単発の仕事を請け負う働き方で、フリーランスや副業の拡大を後押ししています。企業側も、特定のプロジェクトに必要な専門スキルを外部から調達できるため、柔軟な人材活用が可能になります。
副業が広く受け入れられる背景には、主に以下の要因が挙げられます。
収入源の多様化
インフレや物価上昇への対応、生活水準の向上、将来への備えとして、本業以外の収入を確保する動きが活発です。
スキルの向上とキャリアの拡張
本業とは異なる分野で副業を行うことで、新たなスキルを習得したり、人脈を広げたりすることが可能です。これは、キャリアアップや転職の際の強みにもなります。
ライフワークバランスの追求
自分の興味や関心のある分野で働くことで、仕事への満足度を高め、より豊かな人生を送るための手段と捉えられています。
特にIT分野では、プログラミングやウェブデザイン、コンテンツ制作など、リモートワークで完結する副業が多く存在します。先進国では、副業を解禁する企業が増え、社員の自律的なキャリア形成を支援する傾向が強まっています。

東南アジアの経済を牽引するベトナムでは、若者を中心に副業が非常に盛んです。社会主義国でありながら、市場経済を導入し急速な経済発展を遂げる中で、国民の働き方にも大きな変化が起きています。
ベトナムにおける副業の特徴は以下の通りです。
生活防衛と自己実現の両立
まだ物価が比較的安価なベトナムではありますが、特に都市部では生活費が上昇傾向にあります。そのため、家計を支えるために副業をするケースが多く見られます。同時に、自分の好きなことや得意なことを活かして、本業では得られないやりがいや収入を得ようとする若者が増えています。
デジタル技術の活用
スマホの普及率が高く、SNSやeコマースが生活に深く根付いています。このため、オンラインでの副業が非常に活発です。例えば、FacebookやTikTokなどのSNSで商品の販売やアフィリエイトを行うインフルエンサー、eコマースサイトで商品を売る個人事業主、オンラインで語学を教える家庭教師などが多数存在します。
起業家精神の表れ
副業を単なる収入源ではなく、将来の起業に向けた「お試し」期間と捉える若者も少なくありません。本業で得たスキルや経験を活かし、小規模なビジネスを立ち上げることで、市場の反応を確かめ、本格的な事業展開の足がかりとします。
ハノイやホーチミンといった大都市では、本業がITエンジニアやデザイナーの人が、週末にカフェでフリーランスの仕事を受けたり、友人と小さなアパレルブランドを立ち上げたりする光景は珍しくありません。このダイナミックな動きは、ベトナム経済の成長を象徴するものです。

ベトナムと日本の副業事情を比較すると、興味深い違いが見えてきます。
制度と文化
経済的な動機
政府の役割
日本の社会は、少子高齢化が進み、労働人口が減少していく中で、一人ひとりの生産性を高めることが急務です。多様な働き方を許容し、個人の能力を最大限に引き出すことは、企業の成長だけでなく、日本経済全体の活性化にも繋がります。
ベトナムの事例から日本が学べることは、「挑戦を恐れない姿勢」と「多様な働き方を受け入れる寛容さ」です。副業は、単なる収入源ではなく、個人のスキルを磨き、自己実現を追求するための重要な手段です。企業は、社員の副業を制限するのではなく、むしろ積極的に支援することで、社員のエンゲージメントを高め、新しいアイデアやイノベーションを生み出す土壌を育むことができます。
副業が当たり前になる社会は、個人が自律的にキャリアを築き、企業がより柔軟に人材を活用できる、双方にとってメリットの大きい未来を切り開く可能性を秘めています。日本の社会も、ベトナムのような活気に満ちた働き方を参考にしながら、新たな労働環境を構築していくことが求められているのではないでしょうか。
岸菜 圭一郎(ベトナムオフショア開発協会 パートナーメンバー)
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こんにちは。ベトナムオフショア開発協会、理事の井上です。
システム開発において、日本側からの指示や要件が「ざっくり」していることに悩む現場は少なくありません。「いい感じにしておいて」「普通はこうするよね」といった曖昧な依頼は、一見すると信頼の表れのように見えますが、異文化間やチーム間で共有されているコンテキストが少ない場合、大きな誤解や手戻りを招くリスクをはらんでいます。
本稿では、この「ざっくり依頼」がなぜ発生するのかを掘り下げ、現場が主体的にそのギャップを埋める「補完力」とその実践方法について解説します。

日本側の依頼が曖昧になる背景には、いくつかの要因があります。
これらの要因が重なり、受け手側は「何を求められているのか分からない」という状態に陥り、プロジェクトの品質や納期に影響を与えてしまいます。

「補完力」とは、依頼の曖昧さを解消するために、現場が自律的に動く力です。これは単に指示を待つのではなく、能動的に情報を引き出し、共通認識を構築するプロセスを指します。
1.「具体化」のための質問力
2.「見える化」によるギャップの解消
3.「共通言語」の構築
「ざっくり依頼」は、日本側の文化的な背景からくるものであり、それを変えることは容易ではありません。しかし、現場が「補完力」を身につけることで、不確実性を管理し、プロジェクトを成功に導くことができます。本来は日本側もこれを認識し、オフショアをきっかけにドキュメントの整備や開発プロセスを見直すべきですが、
重要なのは、依頼を「待つ」のではなく、自ら「取りに行く」姿勢です。この「補完力」は、単にプロジェクトを円滑に進めるだけでなく、現場チームの主体性を高め、コミュニケーションの質を向上させることにも繋がります。
井上 拓也(ベトナムオフショア開発協会 理事)
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