こんにちは。ベトナムオフショア開発協会事務局です。

オフショア開発を続けていると、必ず直面するのが「属人化」の問題です。
あるエンジニアが抜けた瞬間に仕様がわからなくなる。
チームリーダーが交代すると、品質や進め方が急に不安定になる。
こうした“個人依存”は、国内開発でも課題ですが、言語・文化の壁があるオフショアでは一層深刻です。

プロジェクトを「人」ではなく「仕組み」で動かすためには、ナレッジを組織として継承する仕組みが欠かせません。
本稿では、属人化が起きる背景と、それを防ぐための仕組みづくりを具体的に解説します。

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1.なぜオフショアでは属人化が起きやすいのか

① 人の流動性が高い
海外拠点では人材の入れ替わりが早く、特に若手エンジニアは数年で転職するケースが一般的です。
日本企業が求める「長期で育てる」スタイルが通用しにくく、個人に依存する知識が引き継がれにくい構造になっています。

② 言語の壁で情報が止まる
ブリッジSEやリーダーが日本語を理解できても、他の開発者は英語や母国語でしか情報を把握できません。
日本語の仕様書やレビューコメントが現地に伝わらず、結果として情報の翻訳・伝達コストが属人化の温床になります。

③ ドキュメント文化の差
日本企業は仕様や議事録を詳細に残す傾向がありますが、海外では「話して決める」「SlackやZaloなどチャットで済ませる」文化が強いこともあります。
文書化の粒度が異なることで、「どこに何が書いてあるか分からない」状態が発生しやすくなります。

2.属人化を防ぐ“3層構造”のナレッジ共有

属人化を防ぐには、単にドキュメントを増やすだけでは不十分です。
ナレッジ共有は次の3つの層で設計することが重要です。

(1)プロジェクトナレッジ(案件固有の情報)
要件定義書、設計書、テストケース、レビュー記録など、案件ごとの成果物。
これらは共通のストレージ構造と命名規則を定め、いつでも検索・再利用できる状態にします。
代表的な方法としては、

といった手法が有効です。

(2)技術ナレッジ(開発標準・再利用情報)
共通設計テンプレート、コーディング規約、レビュー基準、テスト観点集など、横断的に使う知識群です。
これを整備することで、担当者が変わっても同じ品質で開発を再現できます。
CMMIやISO9001などの品質マネジメントを参考に、「プロセスごとに最低限必要なアウトプットを定義する」仕組みが効果的です。

(3)組織ナレッジ(文化・ノウハウ・教訓)
プロジェクトで得た教訓や改善策、FAQ、トラブル事例などをナレッジレビュー会や振り返り会で共有します。
単なる「反省会」ではなく、改善項目を文書化・仕組み化して次の案件に適用するのがポイントです。
ベトナムの多くの開発企業では、定期的な「Lesson Learned」レビューを文化として組み込んでおり、これが属人化防止に大きく貢献しています。

3.情報を“構造化”する仕組みづくり

ナレッジを共有しても、探せなければ意味がありません。
そこで重要なのが、「情報をどこに、どう蓄積するか」を構造化することです。

① データ分類と命名ルール
同じフォルダに設計書、議事録、スクリーンショットが混在している状態は最悪です。

を徹底するだけでも、引き継ぎ効率は大幅に上がります。

② “暗黙知”を形式知に変える
属人化の大半は「頭の中にある知識」が外に出ていないことに起因します。
レビューコメント、定例会議のQ&A、チャット上のやり取りなどを定期的にまとめて記録化することで、属人知を組織知に変換できます。
SlackやTeamsのスレッドを週単位でまとめてWiki化するなど、軽い運用から始めても効果的です。

③ 引き継ぎの“仕組み”を標準化
担当者交代時に慌てて引き継ぐのではなく、「最初から引き継ぎを前提にドキュメントを残す」設計思想が必要です。
たとえば、

こうした手順をプロセス標準として組み込むことで、属人化リスクを制度的に下げられます。

4.現場運用の工夫:人を“つなげる”共有スタイル

ナレッジ共有の仕組みは、ツールだけで完結しません。
重要なのは、「情報を動かす文化」をどう作るかです。

このような小さな習慣を積み重ねることで、「属人化しないチーム文化」が根づきます。
特にBrSEやQAリーダーが“情報のハブ”として動くと、現場全体が安定します。

まとめ

オフショア開発では、属人化は避けて通れないリスクです。
しかし、プロジェクト・技術・組織の3層でナレッジを整理し、情報の構造化と共有文化を育てることで、そのリスクは大幅に軽減できます。

人が変わっても品質を維持できるチームは、単にスキルが高いのではなく、「ナレッジが生きている組織」です。
オフショア開発を長期的な戦略として成功させるために、“引き継がれる仕組み”を今のうちから設計しておくことをおすすめします。

ベトナムオフショア開発協会では、
日越の協業を進めるうえで役立つ考え方や、現場に基づいた知見を日々発信しています。

本記事の内容も含め、より詳しい情報は会員限定コンテンツとしてお届けしています。
セミナーや視察ツアーのご案内とあわせて、メールにてご案内しています。

こんにちは。ベトナムオフショア開発協会、理事のLE ANH TUANです。

オフショア開発では、同じ言葉を使って話していても、成果物が期待と大きく異なることがあります。この原因の多くは、「認知のズレ」にあります。
認知のズレとは、双方が無意識に持っている“見えない前提”の違いによって発生する誤解です。
言語や文化、経験の違いによって生まれるこのズレは、プロジェクト後半で手戻りや品質低下を招くことがあります。
この記事では、認知のズレが発生する背景、実例、そしてすり合わせの具体的な方法を詳しく解説します。

この記事はこんな人におすすめです。

1.認知のズレが生まれる背景

①文化や経験の違い

例えば「テストをしてください」という指示一つでも、日本の開発者は「単体テストから結合テストまで網羅的に行う」と考えるかもしれません。一方、海外チームは「ユニットテスト中心で実施」と解釈することがあります。
どちらも間違いではありませんが、前提が異なるために結果がずれてしまいます。

②暗黙の期待の不一致

日本では「高品質」「納期厳守」は当然の前提として捉える傾向がありますが、海外チームにとっては明示されなければ期待値は共有されません。
このズレが後工程での修正や手戻りを生み、工数とコストを増大させます。

③用語の解釈の違い

同じ言葉でも、文化や業務経験によって理解が異なる場合があります。たとえば「簡単に使えるUI」という表現は、日本側では直感的操作を指しますが、海外チームではデザインがシンプルであることと解釈することがあります。

2.認知のズレを防ぐ具体的手法

①前提を明示する

プロジェクト開始時に、双方の前提を明確にして共有することが重要です。

②ドキュメントとサンプルの活用

仕様書だけでなく、完成イメージやモックアップを提示することで、認識のズレを減らすことができます。

③定期的なレビューと確認

進捗に応じて定期的なレビューを行い、早期に認知のズレを発見します。

④用語集とルールの共有

プロジェクト内で使用する専門用語や略語を整理してチーム全体で共有することで、誤解を防ぎます。

3.実際の事例

ある企業で、「ユーザーが簡単に操作できる検索機能を作る」という依頼を出しました。日本側では直感的な操作と高速検索を想定していましたが、海外チームはUIがシンプルであればよいと解釈してしまい、検索速度の最適化は行われませんでした。
後からこの差異が発覚し、追加工数とコストが発生しました。
このケースでは、初期段階で「操作のしやすさ」「検索速度」の両方を明示して共有していれば防げた問題です。

4.すり合わせを習慣化する

認知のズレは一度の打ち合わせでは解消できません。継続的に確認を行う仕組みが必要です。

これにより、プロジェクト後半での大きな手戻りを防ぎ、効率的な開発が可能になります。

まとめ

オフショア開発では文化や経験の違いによって「認知のズレ」が生じやすく、これが手戻りや品質低下の原因になります。
重要なのは、見えない前提を可視化し、定期的にすり合わせることです。

この習慣を取り入れることで、オフショア開発の成功率は大幅に向上します。、プロジェクト後半での大きな手戻りを防ぎ、効率的な開発が可能になります。
次のプロジェクトから、まず「私たちの前提は一致しているか?」を確認することをおすすめします。

LE ANH TUAN(ベトナムオフショア開発協会 理事)

ベトナムオフショア開発協会では、
日越の協業を進めるうえで役立つ考え方や、現場に基づいた知見を日々発信しています。

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こんにちは。ベトナムオフショア開発協会事務局です。

オフショア開発を検討するとき、「国内開発と同じ体制で進めればいいのでは」と考える企業は少なくありません。
しかし、実際には国内開発では見えにくい“境界”がいくつも存在します。
言語・文化・作業時間・開発プロセスの前提――それらの違いを橋渡ししなければ、プロジェクトはすぐに認識齟齬を起こします。

その境界を埋めるのが、オフショア開発に特有の職種たちです。
本稿では、国内開発には登場しにくいものの、海外チームと連携するうえで欠かせない代表的なメンバーと、その役割の背景を解説します。

この記事はこんな方におすすめです

1.ブリッジSE(BrSE)――文化と要件の翻訳者

オフショア開発を語るうえで欠かせない存在が「ブリッジSE(Bridge System Engineer)」です。
BrSEは単なる通訳ではなく、「ビジネス要求を技術言語に変換し、逆方向にも翻訳するエンジニア」です。

日本側の顧客やPMが語る要件には、しばしば“日本的な曖昧さ”が含まれます。
「普通はこうするよね」「細かい部分は任せる」といった言葉を、現地の開発者がそのまま理解するのは不可能です。BrSEはこうした言葉の背景を読み取り、目的・前提・制約を整理して現地メンバーに伝えます。同時に、現地チームから上がる質問やリスクを日本語で再構成し、意思決定者に報告します。

この“橋渡し”がなければ、進捗は見えていても、成果物の中身がずれていく。
BrSEは単なる翻訳者ではなく、文化の違いによる“認識の歪み”を修正する調整者なのです。

2.BSE(Base SE)またはリードエンジニア――技術の橋渡し役

BrSEが主に言語とマネジメントの橋を担うのに対し、BSE(Base SE)は技術的な橋を担います。
彼らは詳細設計やレビューを中心に、開発者が迷わないよう技術面の方向性を示します。

国内では、経験豊富なSEやチームリーダーが自然とこの役割を果たしますが、オフショアでは技術スタックやフレームワークの理解度、ドキュメント形式の違いが障害になります。
BSEが存在することで、日本の開発標準を現地仕様に落とし込み、設計品質を均一化することが可能になります。

たとえば、設計レビューで「この命名ルールはチーム全体で統一しましょう」「例外処理の方針を確認しておきましょう」と指摘するのもBSEの仕事。
チームの技術的な共通言語を整備する役割を担います。

3.QC(Quality Control)/QCL(Quality Control Leader)――品質を守る専門職

オフショア開発では、テスト工程にQC(品質管理)QCL(品質管理リーダー)という専任職種を置くことが一般的です。QCは単体・結合・システムテストの観点を作成し、テストケースを設計・実施します。QCLはその品質を横断的にチェックし、欠陥傾向を分析します。

国内開発では、開発者自身がテストを兼任することが多く、テスト担当を独立させるケースは限られます。しかし、海外チームでは「テストの粒度」や「合格基準」の感覚が異なるため、第三者による品質検証が不可欠です。

特にベトナムでは、日本語での読み書きができるQCメンバーが多く、翻訳を介さずにテストケースやバグ報告を扱えるのが強みです。また、彼らは単にバグを見つけるだけでなく、「再発防止のためにどの設計段階で止められたか」を振り返る文化を持っています。
その結果、テストチーム自体が“品質教育の場”として機能します。

4.QA(Quality Assurance)――プロセス品質を監視する立場

QCが「成果物の品質」を担保するのに対し、QAは「プロセスの品質」を監視します。
各工程が計画どおり実施されているか、レビュー・テストが適切に行われているかを定期的に監査し、問題があれば是正を指示します。

国内の中小規模開発では、QAを専任で置くことは稀です。しかし、オフショアでは国や拠点ごとに複数プロジェクトが同時進行するため、標準化と再現性の確保が成功の鍵になります。

QAはその要となる存在で、チェックリストの運用、品質レポートの作成、振り返りの実施などを通じて、プロジェクト横断で改善を促します。たとえば、過去の案件で発生した障害を横展開し、次の案件では事前チェックに組み込むといったサイクルを構築します。
QAがいることで、属人的な品質管理から脱却できるのです。

5.コミュニケーター/翻訳担当――情報の正確さを担保する支援役

オフショア開発では、BrSEが通訳を兼ねることもありますが、全てを担うのは現実的ではありません。
そこで登場するのが、会議の逐次通訳やドキュメント翻訳を専門に行うコミュニケーターです。

議事録や仕様書、テスト報告書など、正確な翻訳を必要とする文書は膨大です。ここで誤訳が生じると、要件や優先度の認識が狂い、手戻りが発生します。コミュニケーターが存在することで、BrSEやPMが調整業務に専念でき、プロジェクト全体の情報伝達スピードが格段に上がります。

また、最近では翻訳ツールの精度向上により、「機械翻訳+人のレビュー」という効率的な分業も可能になっています。
テキスト量が膨大なオフショア開発では、この役割が地味に大きな成果を生むのです。

6.QAリーダー/PMO――全体最適を見渡す監督者

開発拠点が複数あり、プロジェクトが並行して動く企業では、QAリーダーやPMO(Project Management Office)を置く体制が一般的です。PMOはプロジェクト全体を俯瞰し、進捗・課題・リスクを横断的に管理します。一方でQAリーダーは品質の基準を統一し、複数チーム間で改善サイクルを回します。

オフショア開発では、個々のチームが独立して動くと、品質や管理レベルがバラバラになります。PMOやQAリーダーがいることで、チームをまたぐ共通ルールと透明性を保つことができます。
国内の大手SIerにおける“標準化部門”のような役割を、オフショア体制でも再現するのが理想です。

7.“日本では不要”でも“オフショアでは必要”な理由

これらの職種は、国内開発では「コスト要因」に見えるかもしれません。
しかしオフショア開発においては、距離・言語・文化という3つの壁を越えるための装置です。
BrSEが言語の壁を、BSEが技術の壁を、QC・QAが品質の壁を、それぞれ支えています。

この“装置”がなければ、わずかな誤解が雪だるま式に膨らみ、最終的には「安くない」「早くない」「品質が低い」という結果に陥ります。オフショア成功の鍵は、メンバーを減らすことではなく、必要な役割を適切に配置して協働させることなのです。

まとめ

オフショア開発は単なるコスト削減の手段ではなく、多様な専門性で補い合うチームづくりの取り組みです。国内と同じ感覚で体制を組んでしまうと、すぐに見えない摩擦が発生します。BrSE、BSE、QC、QA、コミュニケーター、PMO――これらの職種は、「距離を埋めるためのコスト」ではなく「信頼を築くための投資」として位置づけるべきです。

オフショア開発を検討する際は、“誰がコードを書くか”だけでなく、“誰が理解をつなぐか”を考えること。そこにこそ、成功するチーム設計の第一歩があります。

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こんにちは。ベトナムオフショア開発協会の岸菜です。

グローバル化が進む現代において、一つの会社に勤めながら別の仕事を持つ「副業」は、多くの国で当たり前の働き方になりつつあります。
このコラムでは、海外企業社員の副業の実態を広く見渡し、特に経済成長著しいベトナムの事例を掘り下げ、日本の状況と比較することで、新しい働き方のヒントを探ります。

この記事はこんな人におすすめです。

1.多くの国で広がる副業という選択肢

近年、欧米を中心に「ギグエコノミー」という言葉が浸透しています。これは、インターネットを通じて単発の仕事を請け負う働き方で、フリーランスや副業の拡大を後押ししています。企業側も、特定のプロジェクトに必要な専門スキルを外部から調達できるため、柔軟な人材活用が可能になります。
副業が広く受け入れられる背景には、主に以下の要因が挙げられます。


収入源の多様化
インフレや物価上昇への対応、生活水準の向上、将来への備えとして、本業以外の収入を確保する動きが活発です。

スキルの向上とキャリアの拡張
本業とは異なる分野で副業を行うことで、新たなスキルを習得したり、人脈を広げたりすることが可能です。これは、キャリアアップや転職の際の強みにもなります。

ライフワークバランスの追求
自分の興味や関心のある分野で働くことで、仕事への満足度を高め、より豊かな人生を送るための手段と捉えられています。


特にIT分野では、プログラミングやウェブデザイン、コンテンツ制作など、リモートワークで完結する副業が多く存在します。先進国では、副業を解禁する企業が増え、社員の自律的なキャリア形成を支援する傾向が強まっています。

2.経済成長を背景に活発化するベトナムの副業

東南アジアの経済を牽引するベトナムでは、若者を中心に副業が非常に盛んです。社会主義国でありながら、市場経済を導入し急速な経済発展を遂げる中で、国民の働き方にも大きな変化が起きています。
ベトナムにおける副業の特徴は以下の通りです。


生活防衛と自己実現の両立
まだ物価が比較的安価なベトナムではありますが、特に都市部では生活費が上昇傾向にあります。そのため、家計を支えるために副業をするケースが多く見られます。同時に、自分の好きなことや得意なことを活かして、本業では得られないやりがいや収入を得ようとする若者が増えています。

デジタル技術の活用
スマホの普及率が高く、SNSやeコマースが生活に深く根付いています。このため、オンラインでの副業が非常に活発です。例えば、FacebookやTikTokなどのSNSで商品の販売やアフィリエイトを行うインフルエンサー、eコマースサイトで商品を売る個人事業主、オンラインで語学を教える家庭教師などが多数存在します。

起業家精神の表れ
副業を単なる収入源ではなく、将来の起業に向けた「お試し」期間と捉える若者も少なくありません。本業で得たスキルや経験を活かし、小規模なビジネスを立ち上げることで、市場の反応を確かめ、本格的な事業展開の足がかりとします。


ハノイやホーチミンといった大都市では、本業がITエンジニアやデザイナーの人が、週末にカフェでフリーランスの仕事を受けたり、友人と小さなアパレルブランドを立ち上げたりする光景は珍しくありません。このダイナミックな動きは、ベトナム経済の成長を象徴するものです。

3.ベトナムと日本の副業事情:異なる文化と制度

ベトナムと日本の副業事情を比較すると、興味深い違いが見えてきます。

制度と文化

経済的な動機

政府の役割

4.日本がベトナムから学べること

日本の社会は、少子高齢化が進み、労働人口が減少していく中で、一人ひとりの生産性を高めることが急務です。多様な働き方を許容し、個人の能力を最大限に引き出すことは、企業の成長だけでなく、日本経済全体の活性化にも繋がります。

ベトナムの事例から日本が学べることは、「挑戦を恐れない姿勢」と「多様な働き方を受け入れる寛容さ」です。副業は、単なる収入源ではなく、個人のスキルを磨き、自己実現を追求するための重要な手段です。企業は、社員の副業を制限するのではなく、むしろ積極的に支援することで、社員のエンゲージメントを高め、新しいアイデアやイノベーションを生み出す土壌を育むことができます。

副業が当たり前になる社会は、個人が自律的にキャリアを築き、企業がより柔軟に人材を活用できる、双方にとってメリットの大きい未来を切り開く可能性を秘めています。日本の社会も、ベトナムのような活気に満ちた働き方を参考にしながら、新たな労働環境を構築していくことが求められているのではないでしょうか。

その他ポイント

岸菜 圭一郎(ベトナムオフショア開発協会 パートナーメンバー)

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こんにちは。ベトナムオフショア開発協会、理事の井上です。

システム開発において、日本側からの指示や要件が「ざっくり」していることに悩む現場は少なくありません。「いい感じにしておいて」「普通はこうするよね」といった曖昧な依頼は、一見すると信頼の表れのように見えますが、異文化間やチーム間で共有されているコンテキストが少ない場合、大きな誤解や手戻りを招くリスクをはらんでいます。

本稿では、この「ざっくり依頼」がなぜ発生するのかを掘り下げ、現場が主体的にそのギャップを埋める「補完力」とその実践方法について解説します。

この記事はこんな人におすすめ

1.なぜ「ざっくり依頼」は生まれるのか?

日本側の依頼が曖昧になる背景には、いくつかの要因があります。

「言わずもがな」の文化

心理的な負担

コミュニケーションの「省略」

過去の経験

これらの要因が重なり、受け手側は「何を求められているのか分からない」という状態に陥り、プロジェクトの品質や納期に影響を与えてしまいます。

2.現場が身につけるべき「補完力」とは?

「補完力」とは、依頼の曖昧さを解消するために、現場が自律的に動く力です。これは単に指示を待つのではなく、能動的に情報を引き出し、共通認識を構築するプロセスを指します。

実践すべき3つのアプローチ

1.「具体化」のための質問力

2.「見える化」によるギャップの解消

3.「共通言語」の構築

まとめ

「ざっくり依頼」は、日本側の文化的な背景からくるものであり、それを変えることは容易ではありません。しかし、現場が「補完力」を身につけることで、不確実性を管理し、プロジェクトを成功に導くことができます。本来は日本側もこれを認識し、オフショアをきっかけにドキュメントの整備や開発プロセスを見直すべきですが、

重要なのは、依頼を「待つ」のではなく、自ら「取りに行く」姿勢です。この「補完力」は、単にプロジェクトを円滑に進めるだけでなく、現場チームの主体性を高め、コミュニケーションの質を向上させることにも繋がります。

井上 拓也(ベトナムオフショア開発協会 理事)

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こんにちは。ベトナムオフショア開発協会、理事のLE ANH TUANです。

オフショア開発は、コスト削減や人材確保の面で非常に有効な手段です。
国内のエンジニア不足が深刻化する中、海外の優秀な人材を活用できることは、多くの企業にとって魅力的な選択肢となっています。しかし、異文化・異言語環境での開発では、指示の伝達における小さなズレが思わぬトラブルへと発展することがあります。

特に多くの日本企業が陥るのが、「言ったつもりが伝わらない」という問題です。
「指示したはずなのに、期待した成果物が返ってこない」「なぜここを直してくれないのかがわからない」――そんな経験をしたことはないでしょうか。

この問題の背景には、曖昧な表現や暗黙の前提が存在します。この記事では、曖昧な指示が引き起こす具体的なリスクと、すぐに実践できる改善策を解説します。

この記事はこんな人におすすめです。

1.曖昧な指示が招く具体的リスク

①抽象的な表現の誤解

日本企業でよく使われる「いい感じに仕上げてください」「前回と同じ感じで」といった表現は、一見丁寧に聞こえますが、受け手にとっては非常に抽象的です。

海外チームは日本語の曖昧なニュアンスを読み取ることが難しく、文面通りにしか解釈できない場合があります。その結果、「雰囲気」や「センス」に依存した部分がずれ、完成物が期待とかけ離れてしまうのです。
このようなすれ違いは、言語の問題というよりも“文化の前提”の違いから生じます。曖昧さが好まれる日本と、明確さが重視される国との違いを意識しなければ、誤解は繰り返されます。

②仕様の省略による手戻り

「細かいところは任せる」「必要な機能はわかるだろう」といった省略は、オフショアでは特に危険です。

相手の技術レベルを信頼することは大切ですが、仕様の前提や業務背景を共有せずに進めてしまうと、後の手戻りにつながります。
特にUIや業務フローの微細な部分で、後から「思っていたのと違う」となり、修正に時間とコストがかかるケースが多発しています。
指示を省略した時間よりも、修正対応にかかる時間の方がはるかに大きくなる――これは典型的な“オフショアあるある”です。

③暗黙の期待の不一致

日本では「納期厳守」や「高品質」は当然の前提として共有されていますが、海外チームにとってはそうとは限りません。

納期の優先順位、テスト範囲、品質保証の基準などは、国や企業文化によって異なります。
「これくらいは理解してくれているだろう」と思い込んだ結果、スケジュールの遅延や品質のばらつきが発生することも少なくありません。
“暗黙の了解”を前提にする文化は、異文化環境では通用しないという認識が必要です。

2.実際に起きたケース

ある日本企業では、「ユーザーが直感的に操作できる画面を作ってほしい」と依頼しました。
しかし、海外チームが作成した画面は、機能的には問題がないものの、日本側が想定していたUIデザインとは大きく異なりました。ボタンの配置や色使い、文字の間隔などが日本のユーザー感覚とは合わず、修正に多くの時間とコストがかかったのです。

このように、曖昧な表現や前提の共有不足は、開発の遅延やコスト増大を引き起こす直接的な要因になります。
問題の多くは「スキルの差」ではなく、「認識の差」から生じているのです。

3.曖昧さを排除する具体策

①指示を具体的に書く

「ユーザーがログインしたらメールを送ってください」ではなく、「新規ユーザーが初回ログインしたときに、登録されたメールアドレスに確認メールを自動で送信する」と具体的に記述します。
行動の条件、対象、出力、タイミングを明確に書くことで、受け手が誤解する余地を減らせます。

②成果物の受入基準を明示

「完成」とは何をもって完成とするのかを、プロジェクト開始時に明確にします。
ボタンの配置、表示内容、テストの範囲などを具体的に定義し、誰が見ても同じ基準で判断できるようにしておくことが重要です。曖昧な“完成”定義を放置すると、納品直前で想定外の修正が発生しやすくなります。

③モックアップや図解を活用

言葉だけでは伝わりにくいUIや画面のイメージは、図やワイヤーフレームで可視化します。
「このような形にしたい」という意図を、文章ではなく視覚で示すことで誤解を大幅に減らせます。特にUI・UX関連の指示では、画像1枚が文章100行分の効果を持ちます。

④定期レビューで認識の確認

1〜2週間ごとにスプリントレビューを実施し、成果物を小さく確認していくことで、大きなズレを防ぎます。
初期段階での誤解をそのまま放置すると、後工程での修正が指数的に増えます。「早く確認すること」こそが、最も安価な品質保証です。

⑤用語集を共有

日本語特有の表現や業務用語を整理し、チーム全体で共有します。
たとえば「検収」「仕様変更」「一旦保留」などの言葉は、文化や文脈によって受け取り方が異なります。用語集を一度作成しておけば、メンバーが入れ替わっても同じ理解で開発を進めることができます。

4.まとめ

オフショア開発の失敗は、大きな技術的問題よりも、曖昧な指示から始まる小さな認識のズレによって発生することがほとんどです。
「伝えたつもり」が「伝わっていない」状態を放置すれば、品質・コスト・納期のすべてに影響が及びます。
逆に、指示を明確にし、具体例や図解で意図を共有すれば、海外チームの理解力と提案力を最大限に引き出すことができます。
オフショア開発の成功に必要なのは、特別な技術ではなく、「伝える努力を怠らないこと」です。
“言ったつもり”を“確かに伝わった”に変えることで、チームは距離を越えて一体化し、より強い成果を生み出すことができるでしょう。

LE ANH TUAN(ベトナムオフショア開発協会 理事)

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こんにちは。ベトナムオフショア開発協会事務局です。

多くの企業がオフショア開発を検討するとき、最初に思い浮かべるのは「コスト削減」ではないでしょうか。確かにかつては、国内よりも安い人件費で開発を進められるという単純な経済合理性がありました。
しかし、同じ発想のままではうまくいかない時代に入っています。単価の安さを最優先にした結果、品質が揺らぎ、チームが崩壊し、結局やり直しのコストが膨らむ――そんな失敗事例を多く見てきました。
オフショア開発の本質は「節約」ではありません。むしろ新しい能力への投資であり、組織の成長を支える手段です。

この記事はこんな人にオススメ!

1.削減発想の限界

「海外に出せば安くなる」と言い切れる時代は、すでに終わりました。ベトナムをはじめとする主要なオフショア拠点では、物価と給与が上昇し、単純な価格差は年々縮まっています。しかも、安く依頼すればその分だけリソースの確保や品質へのコミットが弱くなります。つまり、“安さ”を目的にしたオフショアほど高くつくのです。

本来の価値は、コストを圧縮することではなく、より多くを生み出す仕組みを作ることにあります。国内だけでは確保しきれない人材やスピードをどのように取り込むか――ここに「投資」という視点が必要になります。

2.コストダウンにも“構造の理解”が欠かせない

もちろん、オフショア開発はうまく設計すれば確実にコストダウンにつながります。
ただし、「なぜ安くなるのか」という構造を理解していなければ、思ったほど費用が下がらないという落とし穴があります。

現地側で増える人員(BrSE、QC、翻訳、管理担当など)の工数や、レビュー・コミュニケーションにかかる時間を考慮しなければなりません。
単純に「単価が安い国だから」ではなく、チーム構成・作業分担・運用プロセスの組み方によってコスト効率は大きく変わるのです。
したがって、オフショアを検討する際には“単価の比較”ではなく“コスト構造の比較”を行うことが重要です。

こうした理解を持ったうえで設計すれば、コストを下げながら品質とスピードを両立させることができます。

オフショア開発のコスト構造について、以下の記事で詳しく解説しています。
【オフショア開発のコスト構造を理解する】

3.投資対象は「人」と「仕組み」

オフショア開発の真価は、安価な工数ではなく、チームが積み上げていく学習曲線にあります。

最初の1〜2プロジェクトでは、仕様理解やコミュニケーションに時間がかかり、「コストが思ったより下がらない」と感じることもあるでしょう。しかし、同じチームで案件を重ねるうちに、現場は驚くほど変化します。レビューの指摘が減り、要件把握が速くなり、品質も安定していくのです。
これは偶然ではありません。人が学び、仕組みが成熟していくからです。

特にラボ型開発のような継続契約では、「教育費」や「育成コスト」としての視点が欠かせません。数か月単位で成果を判断するのではなく、“チームを育てる投資”として捉えることが重要です。

4.ROIで見る「開発資産化」の考え方

多くの企業はオフショア開発を案件単位の損益で評価しようとします。しかしそれは、大学に1年通って「まだ稼げていない」と嘆くようなものです。投資の回収は短期ではなく、チームが成長していく過程で起こります。
たとえば3年スパンで見れば、

1年目:オンボーディング期間。知識共有と信頼関係構築に重点。
2年目:再利用率や自動化率が上がり、設計やテストの生産性が向上。
3年目:現地チームが主体的に改善提案を行い、品質監視も自律化。

このように「学習による効率化」が実現すると、結果的にROIは大きく跳ね上がります。つまり、“開発を回す”のではなく、“開発チームを資産化する”ことが、本当のリターンにつながります。

5.経営視点での投資効果

投資として見ると、得られるリターンはコスト以外の領域にも広がります。

まず、リソース分散によるBCP(事業継続性)の強化です。パンデミックや災害時にも海外拠点が稼働していれば、開発の停滞を防ぐことができます。
次に、国内採用難の緩和があります。慢性的なエンジニア不足の中で、オフショアチームが長期的な開発リソースを担うことは、人的資本への投資と同義です。

さらに、開発スピードの向上や新市場理解といった副次的効果もあります。現地メンバーが持つ柔軟な発想やUI感覚が、日本企業の保守的な開発文化を変えていくことも少なくありません。

これらの効果は損益計算書には載りませんが、確実に企業の競争力を底上げします。

6.“費用会計”ではなく“成長会計”で考える

経理上の区分としては外注費であっても、実態は知識と文化への投資です。

重要なのは、費用を削る意識ではなく、価値を積み上げる意識でオフショアを設計することです。
短期的なコスト削減を目的に動くと、ベンダーも「安く早く納める」方向に偏り、イノベーションが生まれにくくなります。
一方、信頼を前提とした長期的な関係を築けば、現地側も自社の一員として成長し、改善提案や品質保証の文化が根付いていきます。

オフショア開発は「外注」ではなく、「組織拡張」の手段です。
それを理解した企業だけが、真の意味でグローバルな開発体制を築くことができます。

まとめ:コストは“計画時”に決まる

オフショア開発を「投資」として見直すと、その姿が一変します。
節約のための外注ではなく、新しい能力を育てるための仕組み
短期の安さではなく、長期的な学習と信頼を育てる選択。
人材を削るためではなく、未来の仲間を増やすための戦略。

企業がこの発想を持てるかどうかが、オフショア開発の成否を分けます。
そしてそれは、単なるコストの問題ではなく、経営の成熟度の問題でもあるのです。

ベトナムオフショア開発協会では、
日越の協業を進めるうえで役立つ考え方や、現場に基づいた知見を日々発信しています。

本記事の内容も含め、より詳しい情報は会員限定コンテンツとしてお届けしています。
セミナーや視察ツアーのご案内とあわせて、メールにてご案内しています。

こんにちは。ベトナムオフショア開発協会の岸菜です。

ベトナム経済の中心地として、ダイナミックな成長を続けるホーチミン市。この活気あふれる都市で、多くの日系企業が事業を展開しています。
しかし、異国の地でビジネスを円滑に進めるには、法制度や商習慣の違い、行政との連携など、乗り越えるべき課題も少なくありません。
こうした複雑な環境の中で、日系企業の羅針盤として、そして強力なサポーターとして中心的な役割を担っているのが、ホーチミン日本人商工会(JCCH)です。

JCCHの活動は、単なる会員企業の名簿作りや形式的な会合にとどまりません。その真価は、日々のビジネスに直結する実践的なサポートと、人と人との繋がりを育む温かなコミュニティ形成にあります。

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1.ビジネスの最前線を切り拓く「攻め」の活動

JCCHの活動の大きな柱の一つが、会員企業が直面する経営課題を解決するための「投資・事業環境の改善」です。

例えば、税務や労務、許認可に関する具体的な問題点を会員から吸い上げ、ベトナム政府やホーチミン市人民委員会、さらにはビンズン省やドンナイ省といった周辺地域の行政機関と定期的に「ラウンドテーブル」と呼ばれる意見交換会を開催しています。
これは、個々の企業では難しい行政への働きかけを、組織として行うことで、日系企業全体のビジネス環境を向上させる重要な取り組みです。

また、めまぐるしく変わるベトナムの法令や税制に対応するため、専門家を招いたセミナーを随時開催
最新情報を的確にキャッチし、事業リスクを管理するための知識を提供しています。
これらの活動は、まさにビジネスの最前線で戦う企業にとって、不可欠なインフラと言えるでしょう。

2.縦横の繋がりを生む情報交換のハブ

JCCHの強みは、その緻密なネットワークにもあります。

貿易、建設、金融、ITといった13の「業種別部会」や、ホーチミン市周辺の各省に設けられた「地域別部会」では、同じ分野や地域で活動する企業同士が、日常的な情報交換や勉強会を行っています。
ここでは、成功事例だけでなく、失敗談や現場ならではの悩みも共有され、会員同士が支え合い、共に成長していくための土壌が育まれています。

公式なセミナーでは得られない生きた情報が行き交うこの部会活動こそ、JCCHの活動の基盤であり、生命線です。

3.仕事を超えた絆を育む交流・親睦活動

ビジネスの繋がりをより強固なものにするためには、仕事を超えた人間関係の構築が欠かせません。JCCHは、会員とその家族が一体となって楽しめる大規模な交流イベントも積極的に主催しています。

毎年3,000名近くが参加し、企業対抗で熱戦を繰り広げる「JCCH運動会」は、その最たる例です。青空の下、同僚や家族の声援を受けながら汗を流す経験は、組織のチームワークを高め、参加者にとって忘れられない思い出となります。

その他にも、和やかな雰囲気でネットワーキングができる「ゴルフ大会」や、在留邦人社会の一大イベントである「新年会」など、年間を通じて多くの交流の機会が設けられています。

4.ベトナム社会への感謝と貢献

JCCHは、ビジネス活動の拠点であるベトナム社会への貢献も忘れません。
「社会貢献活動(CSR活動)」として、ホーチミン市内の公園や近隣の海岸で清掃プロジェクトを実施したり、現地の学生たちの日本語学習を支援するために日本語スピーチコンテストに協力したりと、地域に根差した活動を継続しています。

また、児童福祉施設への訪問と支援も行っており、日越の文化交流と相互理解を草の根レベルで深めています。これらの活動は、日系企業がベトナム社会の良き一員であることを示す、重要なメッセージとなっています。

JCCHは、ビジネスの課題解決から会員同士の固い絆の構築、そして地域社会への貢献まで、まさに多岐にわたる活動を通じて、ホーチミン市の日系企業コミュニティを力強く支えています。
それは単なる経済団体ではなく、日越友好の未来を育む、活気に満ちたプラットフォームだといえます。

その他ポイント

岸菜 圭一郎(ベトナムオフショア開発協会 パートナーメンバー)

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こんにちは。ベトナムオフショア開発協会事務局です。

オフショア開発を検討するうえで、最初に気になるのは「コスト」ではないでしょうか。単価の安さに魅力を感じて相談を始める企業は少なくありませんが、実際にプロジェクトが始まると「思ったより高くついた」「予定より時間がかかって人件費がふくらんだ」といった声が聞かれることもあります。なぜこうしたギャップが生まれるのでしょうか。

本記事では、見積書に書かれた「単価」や「合計金額」だけでは判断しきれない、オフショア開発のコスト構造について、その“さわり”を解説します。

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1.「単価が安い=総コストも安い」とは限らない

オフショア開発では、1人月あたりの単価が国内よりも大幅に安く設定されていることが多く、コスト削減を目的に検討される企業も多いはずです。たとえば、日本国内での開発人月が80万円以上かかるケースでも、ベトナムでは40万円~50万円前後で提供されることがあります。

しかし、単価だけを見て「これは安い」と判断してしまうと、後々になって想定外の追加費用が発生することがあります。たとえば、成果物の品質が十分でなく、追加の修正が必要になったり、テスト段階で不具合が多発し再調整が発生したりと、プロセスの各段階で“見えないコスト”が積み重なっていくのです。

2.コスト構造はプロセス単位で見る

オフショア開発にかかるコストは、単に「実装作業の時間」によって決まるものではありません。実際には、以下のような各プロセスごとに、それぞれコストが発生します。

たとえば、要件定義の段階でヒアリングが不十分だと、後続工程で仕様のズレが発覚し、戻り作業(=余計なコスト)につながります。また、テスト工程を軽視して開発を進めると、不具合対応が本番リリース後に持ち越され、信頼損失や追加費用につながる可能性もあります。

こうしたプロセスごとのコストをあらかじめ想定しておくことで、全体の開発費用をコントロールしやすくなります。

3.ラボ型と請負型でもコストのかかり方が変わる

オフショア開発には主に「ラボ型」と「請負型」の2種類の契約形態がありますが、どちらを選ぶかによってもコスト構造は大きく異なります。

ラボ型:月額固定のチーム契約で、自由度が高いがマネジメント負荷もある

請負型:成果物ベースの契約で、一定の品質が保証されるが変更に弱い

たとえば、要件が流動的なプロジェクトで請負型を選んでしまうと、後からの仕様変更によって追加費用が発生しやすくなります。逆に、ラボ型では仕様変更への柔軟性はありますが、プロジェクト管理や成果物レビューに自社側のリソースが取られ、結果的に「安く見えて高くつく」こともあります。

コストを正しく把握するためには、契約形態と自社の体制の相性を見極めることも必要です。

4.品質を担保するための“見えない工数”

オフショア開発では、日本側と海外開発チームの間に文化・言語・仕事観の違いが存在するため、品質担保のために追加的なマネジメント工数が必要になることがあります。

こうした“橋渡し作業”は、見積書には記載されないことが多いですが、プロジェクトを安定して進めるためには避けて通れません。この工数を見込まずに進めてしまうと、途中で炎上したり、リリース後に手戻りが発生するなど、長期的なコスト増につながるリスクがあります。

まとめ:コストは“計画時”に決まる

オフショア開発におけるコストの大部分は、実は「契約前の準備段階」で決まると言っても過言ではありません。要件が曖昧なまま進めたり、契約内容が抽象的だったりすると、後から見えないコストが雪だるま式に膨らんでいきます。

「ベトナムは安い」と思い込んでスタートするのではなく、「何に、どれくらいかかるのか」を事前に整理し、準備を整えることが、成功の第一歩になります。

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こんにちは。ベトナムオフショア開発協会、理事の井上です。

ベトナムでのオフショア開発が当たり前となった今、プロジェクトマネージャー(PM)は国境を越えた「すり合わせ」という、課題に直面しています。特にベトナム拠点に常駐するPMは、日本側と現地ベトナム人チームの間に立ち、異なる文化と価値観の板挟みになることが少なくありません。

本稿では、ベトナム拠点PMが直面する具体的な苦労と、その解決策について解説します。

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1.苦労の源泉:「仕事観」と「時間の使い方」

ベトナムと日本では、仕事やプライベートに対する考え方が大きく異なります。この価値観のギャップこそが、PMが最も苦労する「すり合わせ」の根幹にあります。

ベトナム人エンジニア

日本人側

この違いにより、日本側が「残業してでも間に合わせよう」と指示しても、ベトナム人チームには「なぜそこまで?」という疑問が生じ、モチベーションの低下につながることがあります。

2.ベトナム拠点PMが直面する「板挟み」のリアル

これらの違いは、以下のような形でPMを板挟みにします。

納期のプレッシャーとチームの抵抗

品質への意識のギャップ

非同期コミュニケーションの課題

3.解決策:共創と信頼を築く3つのステップ

この課題を乗り越えるためには、一方的な指示ではなく、双方の文化を理解し、尊重する姿勢が不可欠です。

ステップ1:透明性と計画の共有

曖昧な指示や暗黙の期待をなくすことが第一歩です。

ステップ2:ベトナムの働き方を尊重する

日本側のやり方を一方的に押し付けるのではなく、現地の文化を理解し、適応することが重要です。

ステップ3:現地PMの役割を再定義する

ベトナム拠点PMは、単なる管理職ではなく、両文化の「ブリッジ」としての役割を果たす必要があります。

日越間の「すり合わせ」は、単なる文化の違いを乗り越えるだけでなく、プロジェクトマネジメントの本質を問い直す機会でもあります。ベトナム拠点PMがこの板挟みを乗り越えるには、両文化の間に立ち、共感と信頼を基盤とした新たなマネジメントスタイルを確立することが求められます。

井上 拓也(ベトナムオフショア開発協会 理事)

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